膝の痛みの原因とは?専門家が伝える“サボり筋”と改善のカギ(前半)
膝の痛みはなぜ起こるのか?
「膝が痛い」とおっしゃる患者さんは本当に多いです。整骨院で日々患者さんと向き合っていると、年齢や性別を問わず膝の不調で悩む方がいかに多いかを痛感します。
まず最初に知っていただきたいのは、膝の痛みにはいくつかの種類があるということです。中でも多くの方が診断されるのが 変形性膝関節症 です。
膝の関節を覆っている軟骨が弾力を失い、すり減って変形することで、膝の動きに制限や痛みが出てくる病気です。レントゲンで「膝の軟骨がすり減っている」と言われると、「ああ、もう治らないんだ…」と落ち込む方も少なくありません。
しかし実はここに大きな誤解があります。
軟骨自体には痛みを感じる神経が存在しません。
つまり、軟骨がすり減ること自体が直接の痛みの原因ではないのです。
本当の痛みの原因は“筋肉の働き”
膝関節は、立ったり歩いたりするたびに大きな負荷を受けています。その負担をやわらげ、膝を守っているのが筋肉です。ところが、この筋肉のバランスが崩れると、膝に余計なストレスがかかり、腱や靭帯に炎症が起こって痛みを感じるのです。
「膝が痛いのは筋力が落ちたから」と考える方が多いですが、実際には 筋肉のアンバランス がより大きな問題です。
人間の体には500以上もの筋肉がありますが、すべてが同じように働いているわけではありません。よく働く筋肉もあれば、普段はほとんど使われず“サボっている”筋肉もあります。

このバランスが崩れるとどうなるか。働きすぎた筋肉は疲労で硬くなり、最後には力を発揮できなくなります。一方でサボっている筋肉は衰えてしまい、全体の負担を分担できなくなる。結果として膝に大きなダメージが集中してしまうのです。
膝を守る“二つの重要な筋肉”
膝の健康を保つ上で特に大切な筋肉が 内転筋 と 内側ハムストリングス です。
内転筋(ないてんきん)
太ももの内側にある筋肉で、足を内側に閉じる働きをします。
本来は膝を内側から安定させ、歩行や立ち上がりを支えてくれる重要な筋肉です。
ところが普段の生活ではあまり使われないため、年齢とともに弱りやすい特徴があります。特に走ったり大股で歩いたりする機会が減ると、さらに衰えてしまいます。
弱った結果どうなるか。座っている時に膝が自然と外側に開いてしまう、いわゆる“お行儀の悪い姿勢”になりやすくなります。女性の場合は尿漏れの原因になることもあります。

内側ハムストリングス
太ももの裏側、内寄りについている筋肉です。
膝が地面からの衝撃を受けた時に、それを吸収して和らげるクッションの役割を果たしています。
この筋肉がサボってしまうと、衝撃がダイレクトに膝関節へ伝わってしまい、炎症や痛みを起こしやすくなります。
筋肉の連鎖的な崩れ
内転筋や内側ハムストリングスがしっかり働かないとどうなるでしょうか?
本来サポートしてくれるはずの筋肉がサボってしまうため、周りの筋肉が代わりに頑張ろうとします。
例えば、外側の筋肉が過剰に働き出し、膝が外側へ引っ張られるようなバランスになります。すると歩き方に癖がつき、膝がまっすぐ伸びにくくなり、歩幅がどんどん小さくなってしまうのです。
「最近歩くのが遅くなった」
「階段がしんどい」
「正座ができない」
こうした日常生活での変化は、筋肉のアンバランスが積み重なった結果だと考えられます。
サボり筋を“ピンポイントで鍛える”
では、どうすれば膝の痛みを改善できるのでしょうか?
ポイントはとてもシンプルで、サボっている筋肉を効率的に鍛えること です。
筋肉全体を鍛えるのではなく、頑張りすぎて硬くなっている筋肉は休ませ、逆に使われていないサボり筋に刺激を与える。この“選択的なトレーニング”が重要になります。
膝の場合、特に鍛えたいのは先ほどお話しした内転筋と内側ハムストリングス。この二つをピンポイントで鍛えるだけで、関節にかかる負担がぐっと減り、歩きやすさが変わってきます。
内転筋のトレーニング
内転筋を鍛える方法はとてもシンプルです。
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仰向けに寝て、両足を腰幅に広げます。
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膝を軽く曲げ、つま先を内側に向けます。
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親指が床につくくらいまで倒し、肘とかかとを支点にしながらお尻を少し持ち上げます。
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内ももに力を込めて10秒キープ。
この時のポイントは「最大限の力で10秒だけ頑張る」こと。長時間行う必要はありません。ピンポイントで力を入れることが大切です。
反対側も同じように行ってください。


内側ハムストリングスのトレーニング
こちらも10秒でできる簡単な方法です。
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両膝を開いて座り、右足のつま先を上に向けます。
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右膝を曲げてかかとをお尻に引き寄せながら、左足でその動きを阻止します。
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右足の筋肉に力を入れ、10秒間キープします。
反対の足も同じように行いましょう。
イメージとしては「かかとでお尻を押しつぶす」くらいの力を込めることです。


毎日10秒で膝の未来が変わる
これらのトレーニングは、1回わずか10秒です。毎日続ければ、今まで眠っていた筋肉が少しずつ目を覚まし、膝を守る力を取り戻してくれます。
もちろん即効性があるわけではありませんが、続けることで「正座が少し楽になった」「階段の上り下りで痛みが和らいだ」といった変化を実感される方が多いです。
前半まとめ
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膝の痛みの直接の原因は「軟骨のすり減り」ではなく、筋肉のアンバランス
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特に大切なのは「内転筋」と「内側ハムストリングス」
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サボり筋を効率的に鍛えることで、関節の負担を減らせる
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毎日10秒のトレーニングで膝の未来は大きく変わる
膝の痛みの原因とは?専門家が伝える“サボり筋”と改善のカギ(後半)
筋肉を鍛えても良くならない場合がある?
ここまで読んでくださった方は「毎日10秒のトレーニングなら続けられるかも」と思われたかもしれません。実際、この方法で楽になった方もたくさんいらっしゃいます。
ただし、中には「トレーニングを続けても膝の痛みがあまり変わらない」という方もいます。
そうした場合、多くは 足部の構造そのもの に原因が隠れています。
人間の体を家に例えると、足は基礎部分です。基礎が傾いてしまうと、いくら柱や壁を補強しても歪みは直りませんよね。それと同じで、足部が崩れていると膝にかかる負担がどうしても減らないのです。
足部が膝に与える影響
足にはアーチと呼ばれる構造があります。特に土踏まずの部分は歩行時の衝撃を吸収し、バランスを保つ大切な役割をしています。
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アーチがつぶれる(偏平足)
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外反母趾で親指が内側に曲がる
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小指側に重心が逃げる
こうした変形や崩れがあると、膝や腰に余分なストレスが加わってしまいます。長年の膝痛に悩む方の多くは、実は足に根本的な原因を抱えていることが少なくありません。
インソールというサポートの力
では、その足部の問題をどう補えばいいのでしょうか。
私が臨床でおすすめしているのが 医療用矯正インソール です。
「ただの中敷きでしょ?」と驚かれる方も多いのですが、実際には中敷きとは全くの別物です。
足の形を矯正し、正しい歩行を促す医療用の装具。それがインソールなのです。
私自身も以前は「インソールで本当に変わるのかな?」と半信半疑でした。しかし自分で使い、歩いて、臨床で患者さんと一緒に検証する中で、その効果を確信しました。
実際の臨床例
ここで、当院での実際のエピソードをご紹介します。
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長年の腰痛を抱えたママさん
小学生の頃から外反母趾に悩み、育児中も腰痛で辛い思いをされていました。矯正用インソールを取り入れた後は、公園でお子さんと一日中遊んでも痛みが出なくなり「もっと早く知りたかった」と笑顔で話してくださりました。 -
ランナーの男性
足底筋膜炎で1年以上走れずにいた方が、インソールを使うことで徐々に痛みが軽減し、練習を再開。フルマラソンで自己ベストを更新されました。 -
デスクワーク中心の女性
坐骨神経痛が出たり消えたりを繰り返していましたが、インソール導入後は再発しなくなりました。「長時間の会議や移動でも安心です」とのお声をいただきました。
これらは特別なケースではなく、臨床の現場で日常的に起きていることです。
セルフケアとプロのサポートの両立
「じゃあ結局インソールがなきゃダメなんですか?」と不安になる方もいると思います。
答えは「どちらも大切」です。
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サボり筋を鍛えるトレーニング は、自分の体を支える筋肉を育てる。
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インソール は、足元という土台を支えて崩れを補正する。
この2つを組み合わせることで、膝の痛みを大きく改善できる可能性が高まります。
特に「何をしても良くならなかった」という方には、足元のチェックをおすすめします。
日本にもっと広がってほしい「足からのアプローチ」
海外には「足病医(そくびょうい)」という専門医が存在します。ニュージーランドやアメリカでは、足のトラブルはまず足病医に相談するのが当たり前です。
一方、日本には残念ながら足の専門家が少なく、膝や腰の痛みがあっても「骨盤矯正」「注射」「湿布」といった対症療法に終わってしまうことが多いのが現状です。
私は「足から整える」という考えがもっと広がれば、多くの方が膝痛から解放されると信じています。
後半まとめ
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トレーニングを続けても痛みが改善しない場合、足部の問題が隠れていることが多い
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インソールは足の形を矯正し、膝や腰への負担を軽減する医療用の装具
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臨床では、インソール導入で長年の痛みが改善するケースが数多くある
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サボり筋トレーニングとインソールの組み合わせが最も効果的
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日本にも「足病医」のような専門分野が広がっていくことを期待
膝の痛みで「もう仕方ない」と諦めかけている方も、足元を整えるという新しい視点を持ってみてください。小さな一歩が、大きな変化につながるはずです。それは“これ”を使うだけで簡単に改善できますよ!


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