グルコサミン・コンドロイチンで軟骨は再生する?膝痛の真実(前半)
「サプリで軟骨がよみがえる?」という期待
膝が痛い方からよく聞かれる質問があります。
「グルコサミンやコンドロイチンを飲んだら、軟骨って再生するんですか?」
あるいは「サメ軟骨が効くって聞いたんですがどうですか?」
CMを見ていると、痛みに悩んでいたおじいちゃんおばあちゃんが「これを飲んだら楽になった!」と笑顔で話している映像が流れます。
でもその下の方、虫眼鏡で見なきゃ読めないくらいの小さな字で「※個人の感想です」って書いてあるんですよね(笑)。
はっきり言います。サプリで軟骨が再生することは ありません。
ただ、なぜそう言えるのか、グルコサミンやコンドロイチンがどんな物質なのかを知っていただくと納得できると思います。
グルコサミンとは?
グルコサミンは私たちの体の中にもともと存在している成分です。
「アミノ糖」と呼ばれる物質で、グルコース(ブドウ糖)にアミノ基がくっついたもの。
関節の軟骨は「ムコ多糖類」というネバっとした成分でできています。
グルコサミンはそのムコ多糖類の構成成分の一つなんですね。
「ムコ」というのは粘液を意味します。つまりグルコサミンは、軟骨の粘弾性を保ち、クッションとして働く物質の材料になるということです。
似たものでよく知られているのがヒアルロン酸。整形外科で「膝にヒアルロン酸注射を打ちましょう」と言われることがありますよね。あれも同じ仲間です。
加齢とともに体内のグルコサミンやムコ多糖類は減少していきます。そのため「飲んで補えば軟骨も復活するんじゃない?」と期待されているわけです。
コンドロイチンとは?
コンドロイチンという名前、ちょっと強そうですよね(笑)。
語源はギリシャ語の「コンドロス=軟骨」です。その名の通り、関節軟骨に豊富に含まれている成分です。
グルコサミンと同じくムコ多糖類の一種で、関節の潤滑やクッション作用を担っています。
それだけでなく、目の角膜や皮膚、臓器などにも存在している重要な成分です。
つまりグルコサミンもコンドロイチンも、確かに「軟骨を作る材料」ではあります。
だから「これを飲めば軟骨が再生する!」という宣伝文句になっているんですね。
でも軟骨は再生しない
ここからが本題です。
グルコサミンやコンドロイチンが悪いわけではありません。
ただし、どれだけ頑張って摂取しても 軟骨は再生しません。
その理由はシンプル。軟骨細胞には自己再生能力がほとんどないからです。
軟骨は「骨の一部」と誤解されがちですが、実際はその90%以上が水分でできています。関節の表面を覆い、摩擦を減らし、衝撃を吸収するゼリーのようなもの。
軟骨には大きく分けて2種類あります。
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硝子軟骨:関節を覆い、クッション性が高い。再生能力が極めて乏しい。
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線維軟骨:損傷部を修復するようにできるが、硝子軟骨よりもクッション性に劣る。
つまり、関節を覆っている大事な硝子軟骨がすり減ると、もう元通りには戻らず、質の劣る線維軟骨に置き換わってしまうんです。
これが変形性膝関節症の進行の仕組み。
永久歯と同じで、一度失ったら再生しないんです。
永久歯に例えると分かりやすい
軟骨の再生を「永久歯」に例えるとイメージしやすいでしょう。
例えば虫歯になった永久歯にカルシウムをどれだけ摂取しても、勝手に元通りにはなりません。
毎日ちりめんじゃこを食べたからって虫歯が治った、なんて話聞いたことないですよね。
もしそんな人がいたら、ぜひすぐに歯医者さんに連れて行ってください(笑)。
それと同じで、「グルグルグルグルグルコサミン~♪」と歌いながら飲んでも、減った軟骨は再生しないんです。
「でも痛みがマシになった」という人は?
ここまで聞くと「じゃあサプリは全く意味ないの?」と思いますよね。
実際には「飲んだら痛みが和らいだ気がする」という方もいらっしゃいます。
ただし、それはたまたま症状の波と重なった可能性が高いです。
膝痛は天候や体調、体重の増減、日常の動き方によって変動します。サプリを飲み始めた時期にたまたま調子が良くなると「効いた!」と思ってしまうわけです。
CMで「飲んで膝が楽になりました」と言っている人がいますが、あくまでも「個人の感想」。科学的に有効性が証明されたわけではありません。
サプリは体に吸収されるのか?
そもそも口から飲んだグルコサミンやコンドロイチンは、体内にほとんど吸収されません。
胃や腸で分解され、必要に応じて再合成されるからです。
一方でヒアルロン酸の注射は、関節に直接成分を届けるので効果があります。
つまり「直接注射するか」「飲んで消化吸収に任せるか」という大きな違いがあるんです。
「サプリを飲めばそのまま軟骨に届く」と考えるのは、残念ながら現実的ではありません。
前半まとめ
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グルコサミンやコンドロイチンは軟骨の材料になる成分だが、摂取しても軟骨は再生しない
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軟骨細胞は再生能力が乏しく、損傷すると質の低い線維軟骨に置き換わってしまう
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「個人の感想です」の言葉に惑わされないこと
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サプリを飲んで「効いた気がする」のは、症状の波と重なっただけの可能性が高い
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飲んだ成分はほとんど吸収されず、直接効果は期待できない
グルコサミン・コンドロイチンで軟骨は再生する?膝痛の真実(後半)
「サプリじゃ治らんのなら、もう終わり?」という声
ここまで読んで、こう思った方もいるでしょう。
「え、じゃあ軟骨減ったらもう一生痛いまま?オワタ\(^o^)/」
安心してください。サプリで再生はしませんが、膝痛を改善する手段はちゃんとあります。
しかもその多くは「今すぐにでもできること」です。
逆に言うと、サプリにだけ頼って「治るはず」と思い込むのが一番危険なんです。
再生医療はどうなの?
テレビや雑誌でもよく見かけるのが「再生医療で軟骨を復活!」という夢のような記事。
確かに世界中で研究は進んでいます。幹細胞を使ったり、人工的に培養した軟骨細胞を移植したり。
ただし現実はかなりシビアです。
すでにボロボロになった高齢者の関節に細胞を入れても、定着させるのはとても難しい。
例えるなら「砂漠に森をつくる」ようなものです。
ポットで育てた小さな苗木を灼熱のサハラ砂漠に植えても、すぐに枯れてしまいますよね。
もちろん研究は進んでいますし、若い人や損傷が軽度な人に対しては成果も出始めています。
でも「サプリ感覚で再生できる」ようになるには、まだまだ時間がかかるでしょう。
じゃあ今できることは?
ここからが大事です。
軟骨は再生しませんが、膝痛を改善する方法はたくさんあります。
1. 体重を減らす
シンプルですが、めちゃくちゃ効果的です。
膝には歩くときに体重の約3倍の負荷がかかります。体重が70kgの人なら、1歩ごとに約210kg。
体重を5kg減らすだけで、膝には数百トン単位の負担軽減になるんです。
「いや、そんなに?」と驚かれる方も多いですが、これは事実です。
2. 運動療法でサボり筋を鍛える
膝痛の多くは「筋肉のアンバランス」が原因です。
特に内転筋や内側ハムストリングスが弱ると、膝が外側に引っ張られて炎症が起きやすくなります。
僕の臨床経験でも、サボっていた筋肉をピンポイントで鍛えると「え?嘘みたいに楽になった!」という方が本当に多いんです。
これはサプリでは絶対にできないことですね。
3. インソールで足から直す
そして僕が強くおすすめするのが 医療用インソール。
膝にかかる負担の多くは「歩き方」や「足のアライメント(骨格の並び)」からきています。
例えば、外反母趾や偏平足があると膝への衝撃は何倍にもなります。
これを放置して「膝に注射して様子見ましょう」と言っても、根本原因が残っている限り再発は必至。
僕自身も歩き遍路で膝が死ぬほど痛くなりましたが、フォームソティックスを入れてからは嘘みたいに改善しました。
臨床でも「10年以上悩んでいた膝痛がウソみたいに消えた」という声を何度も聞いています。
サプリを飲みたい人へのアドバイス
「でも、サプリ飲んでみたいんです…」という方もいますよね。
正直に言うと、若いうちから将来の予防として長期間続けるなら“しないよりはマシ” です。
ただし高齢者の方が「今から飲んで治す!」というのは現実的ではありません。
もし飲むなら「お守り代わり」「ちょっと気休め」くらいにしておくのがいいでしょう。
そして「サプリ+運動+靴の見直し」の組み合わせなら、プラスアルファの効果は期待できるかもしれません。
僕が患者さんに伝えること
患者さんに「グルコサミン効きますか?」と聞かれたら、僕はこう答えます。
「正直、軟骨は再生しません。でも、それよりもっと即効性のある方法がありますよ」
そう言ってシューズの選び方や、簡単にできる運動を一緒にやってもらうと、皆さん驚かれます。
「え?ちょっと立ちやすい!」「階段がラク!」
こういう体感が得られれば、サプリよりずっと前向きに取り組めますよね。
サプリ vs インソール、どっちが効く?
極論を言えば、サプリは“飲んだ気になるもの”、インソールは“体を変えるもの”。
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サプリ → 再生はしない。効果は曖昧。気休めならOK。
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インソール → 体の使い方を変える。膝の負担を根本から減らせる。
実際に臨床で結果を出しているのはインソールや運動療法です。
だから僕は「サプリ飲むなら、そのお金で良い靴とインソール買いましょう」と強くおすすめします。
面白いけど本当の話
ある患者さんに「先生、グルコサミン効きますか?」と聞かれて、僕が「効きません」と答えたら、「でもテレビで効くって言ってましたよ?」と反論されました。
そこで僕はこう言いました。
「じゃあ、ちりめんじゃこ毎日食べて虫歯治った人、見たことありますか?」
その方、しばらく固まってから「……たしかに(笑)」と笑ってました。
例え話って大事ですね。
後半まとめ
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サプリで軟骨は再生しない
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再生医療は研究中だが、臨床応用はまだ難しい
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膝痛改善には体重管理、サボり筋トレーニング、インソールが有効
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サプリは「若い人の予防」なら少し意味あり、「治療」としては意味なし
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サプリに頼るより、行動を変えた方が圧倒的に早い
- ぜひこれを試して下さい!


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