「先生、ボキボキって効果ありますか?」とよく聞かれます
こんにちは。伊豆です!
ここ数年、本当によく聞かれる質問があります。
「先生、首をボキボキするやつって効くんですか?」
理由ははっきりしています。
YouTubeやInstagramで、首や背中を勢いよくひねって“バキッ!”と大きな音を鳴らす動画が大量に出回っているからです。
音が大きい。
リアクションも大きい。
そして「入りました」「戻りました」という言葉。
見ている側は「すごい、効いてる」と思ってしまいます。
しかし、まずは冷静に事実からお話します。
厚生労働省は頸椎への強い矯正に注意喚起を出しています
まず大前提として、国はやめろと言ってます。
頸椎(首の骨)への強い回旋操作については、これまでに神経症状や血管損傷が疑われる事例が報告されています。
そのため、厚生労働省は過去に通知や注意喚起を出し、頸部への過度な矯正についてはやめておけと言っています。
これは感情論ではありません。
実際に事故報告があるからです。高頻度ではないかもしれません。
しかし「ゼロではない」。実際に僕が学生時代にも、自分の治療院で首のボキボキを受けて指の痺れが止まらなくなった人間もいます。
医療や施術の世界では、発生頻度よりも“起きた場合の重大性”が重視されます。
首には、脳へ血液を送る椎骨動脈が通っています。
さらに脊髄が走り、そこから全身へ神経が枝分かれしています。
この部位に強い回旋や過伸展を加えることは、めちゃリスクを伴います。
だからこそ、行政が注意喚起を出しているのです。
当院では、ボキボキ施術は行いません。

ボキッという音の正体は「キャビテーション」
では、あの音は何なのか。
多くの場合「キャビテーション」と呼ばれる物理現象です。
関節内には関節液という潤滑液があります。
この液体には窒素などの気体が溶け込んでいます。
関節を急激に引き離すと、内部圧力が瞬間的に低下します。
すると溶けていた気体が一気に気泡となり、破裂します。
そのときに鳴る音が「ボキッ」です。つまり、骨が入った音ではありません。
骨が何ミリも移動した音でもありません。関節内圧の変化による気泡破裂音です。
指を鳴らすのと同じ原理です。
指を鳴らしたからといって、骨が大きくズレたわけではありませんよね?
ただこれも100%断言できていないのが実際です。
なぜ一時的に楽になるのか
「でも実際、鳴らすと軽くなるんです」
その感覚は否定しません。
急激な刺激が入ると、神経の興奮状態が一時的に変化します。
筋肉の緊張が緩み、可動域が広がったように感じることがあります。痛みを感じる閾値というのも変化します。
しかしそれは神経反射による一時的変化です。
構造が根本的に改善したわけではありません。だから時間が経つと戻るケースが多いのです。
一回で骨が何ミリも動くことはない
動画では「入りました」「戻りました」と言います。
ですが、冷静に考えてください。
一回の刺激で背骨が何ミリも動くなら、人間の背骨は不安定すぎます。
くしゃみ、転倒、ジャンプのたびにズレます。
そんな構造ではありません。
僕は過去に提携医師と連携し、レントゲンを撮りながら施術していた時期があります。もちろんボキボキではなくカイロプラクティック専用のベッドを使ってです。
週2回、約30回。
アフターのレントゲンを見て、そのくらい継続してようやく目でわかる変化が確認できる程度です。
一回で劇的に動くことはありません。
見えない変形が存在する
多くの方の背骨は、加齢や姿勢不良で変形しています。
骨の端が上下で接触し、仮骨(骨棘)ができることがあります。
これは触診では絶対分かりません。
レントゲンで初めて確認できます。
その状態で強い回旋力を加えれば、骨折のリスクがあります。
評価なしのボキボキは、そのリスクを無視している可能性があります。

私自身も、昔はボキボキを教わりました
私も若い頃、グループ院に勤めていた時にボキボキする施術を教わりました。
角度、手の位置、体重の乗せ方、タイミング。「こうすれば鳴る」「ここで押すと入る」と。
当時はそれが“技術の一つ”だと思っていました。実際、音が鳴ると患者さんは驚きます。
そして「すごいですね」「軽くなりました」と言ってくださる。
施術者としては達成感があります。
でも、そこでは“リスクの細かい構造”までは徹底的に教わりませんでした。あと自分もやられているのに、実際自分のレントゲンを撮ったらいがんでいたというね笑
あれは衝撃でした。
しかし「どんな骨変形が危ないのか」「どんな血管走行が問題になるのか」「画像評価なしでの限界」まで深掘りされることは少なかった。
これは個人を責める話ではありません。
現場では結果とスピードが優先されることもあるからです。
勉強を重ねるほど、見え方が変わる
その後、私は多くの勉強会や専門セミナーに参加しました。
解剖学の再学習。神経学の講義。放射線画像の読影。
海外文献の検討。そこで初めて、「これは想像以上に繊細な部位だ」と実感しました。
頸椎動脈の走行は個人差があります。
椎間関節の角度も違います。
骨棘形成の位置も人それぞれ。
加齢に伴う靭帯の肥厚や石灰化もあります。
見えない情報があまりにも多い。
そのとき思いました。
「これ、知らずに勢いでやったら危ないな」と。
若い頃は“できることが増える”ことに価値を感じます。
しかし経験を積むと、“やらない選択”の価値が分かってきます。
日本の制度と現実
日本では整体やカイロプラクティックは国家資格ではありません。
明日から始めても違法ではないのが現実です。
教育内容は統一されていません。
評価方法も統一されていません。
もちろん真剣に学んでいる先生もいます。
しかし制度としての基準が曖昧なのも事実です。
一方、アメリカのカイロプラクターは専門教育を受け、州ごとのライセンス制度があります。
レントゲンを撮影できる環境が整っている州もあります。
ただし「必ず撮らなければ違法」というわけではありません。
ここも誤解が多い部分です。
海外だから安全、日本だから危険、という単純な話ではありません。
重要なのは“評価の質”です。

音に依存する心理
なぜボキボキは人気があるのか。
理由は単純です。
分かりやすいからです。
音が鳴る。
刺激が強い。
達成感がある。
人間の脳は「派手な刺激=変化」と錯覚しやすい。
しかし本当の改善は、地味な積み重ねで起こります。
姿勢の修正。
筋肉の再教育。
神経の興奮を落ち着かせること。
これらは音が鳴りません。
でも確実です。
だから今はやらない
私は何年もレントゲン評価を行いながら施術をしてきました。
その中で分かったのは、「強いスラストをしなくても結果は出せる」ということです。
むしろ急激な刺激は、防御反応を強める場合もあります。
体は守ろうとします。
だから私は、今は首を勢いよくひねる施術を行っていません。
安全性を優先します。
音よりも、長期的な安定を優先します。
最後にお伝えしたいこと
ボキボキが絶対悪だとは言いません。でもやめた方がいいです。せめてレントゲンを撮ってからやるべき。
しかし、リスクを知らずに受けるのは危険です。
動画で見たから。気持ちよさそうだから。それだけで選ばないでください。
首は特に慎重に。
当院では患者様にリスクのあることはしません。
そんなことをしなくてもしっかり痛みを取る技術を磨いております。
伊豆
