突然、顔の半分が動かない|30代女性の顔面神経麻痺と回復までの経過
朝起きたら、顔の左半分が動かない。「え、何これ?」から始まりました
こんにちは、伊豆です!
今回は、ちょっとびっくりする症状のお話です。
ある朝、鏡を見たら顔の半分が動かない。
笑おうとしても片方の口角が上がらない。
目を閉じようとしても、片方だけ閉じにくい。
いや、こんなん急になったら、そら焦りますよね。
今回ご紹介する30代女性も、まさにそんな状態から始まりました。
とても真面目で責任感の強い方で、お仕事の状況を聞くと、職場では人の入れ替わりが続き、辞めた人の仕事までどんどん回ってきていたそうです。
「最近、ほんまに余裕がなかったです」
そう話されるくらい、仕事も精神的にもかなり大変な時期でした。
朝起きても仕事のことを考えて、家へ帰ってからも次の日の仕事が気になる。
休みの日になっても、頭の中が完全には仕事から離れない。
本人としては「まだ大丈夫」と思っていたそうですが、身体はかなり疲れていたんやと思います。
そしてある朝。
鏡を見たときに、「あれ?顔がおかしい」と気づきました。
左側の顔がほとんど動かず、笑顔を作ろうとしても左右が揃わない。
最初は寝ぼけてるんかなと思って、何回か笑ってみたり、目をぎゅっと閉じてみたりしたそうです。
でも、やっぱり動かない。
そこで一気に怖くなったそうです。
慌てて病院を受診し、顔面神経麻痺と診断され、ステロイドによる治療を受けました。
ここで最初に大切なことを言っておきます。
顔が急に動かなくなった場合、まず整骨院や鍼灸院ではなく、医療機関を受診してください。
顔面神経麻痺の中にはベル麻痺などの末梢性の麻痺もありますが、脳卒中など別の病気でも顔の動きに異常が出ることがあります。
特に、顔だけでなく手足の力が入りにくい、言葉が出にくい、ろれつが回らない、激しい頭痛などを伴う場合は急いで医療機関へ行く必要があります。
出典:https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/5457-bells-palsy
1か月経っても動かない。「この顔、このままなんかな…」
病院で治療を始めたものの、この方の場合は1か月ほど経過しても、本人が実感できるほどの変化がありませんでした。
左の口角は上がりにくい。
左目も完全に閉じにくい。
笑おうと思っても、顔の左右差がどうしても目立ってしまいます。
ここって、身体の痛みとはまた違うつらさがあると思うんです。
顔は服で隠せません。
人と話すときも、ご飯を食べるときも、写真を撮るときも、自分自身が毎日鏡で見る場所です。
それまでは普通にできていた「笑う」ということまで、意識しないとできなくなってしまいます。
人と会ったときに、「顔を見られてるんちゃうかな」と気になってしまう。
これ、毎日のことになるとほんまにつらいですよね。
「このまま戻らなかったらどうしよう」
「人と会うのがちょっと嫌になってきました」
そんな気持ちになるのも無理ないですよね。
実際、来院されたときも、症状そのものだけではなく、不安の大きさが表情やお話から伝わってきました。
僕も最初から「鍼をしたら絶対戻りますよ」なんてことは言いません。
そんなこと、簡単に言ったらあかんと思っています。
「時間がかかる可能性もあります。でも今の状態を見ながら、できることを一つずつやっていきましょう」
そうお話しして施術を始めました。
ベル麻痺は多くの場合、時間の経過とともに回復していきますが、回復まで数週間から数か月かかることがあり、症状の程度によって経過も違います。
また、目が完全に閉じられない場合は角膜が乾燥したり傷ついたりする可能性があるため、点眼など眼の保護も非常に大切です。
出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/bells-palsy
そもそも「顔面神経麻痺」って、顔の筋肉が悪いんですか?
患者さんからもよく聞かれるのが、これです。
「顔の筋肉が固まってるんですか?」
いやいや、単純に顔の筋肉だけの問題ではないんです。
顔には、眉を上げる、目を閉じる、口角を上げるなど、たくさんの表情を作る筋肉があります。
それらの筋肉へ「動け」という指令を送っているのが顔面神経です。
ベル麻痺では、この顔面神経に炎症や腫れが起こり、顔の片側の筋肉をうまく動かせなくなると考えられています。
なお、元の文章では「強いストレスがベル麻痺の原因」と書いていました。
ここは少し訂正が必要です。
ベル麻痺の原因は、現在も完全には分かっていません。
ウイルス感染との関連などが考えられていますが、「仕事のストレスが強かったからベル麻痺になった」と単純に断定することはできません。
今回の患者さんに強い疲労やストレスがあったのは事実ですが、それと麻痺の原因をイコールにはしない。
ここは、医療の記事を書くうえでめっちゃ大事なところです。
出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/bells-palsy/symptoms-causes/syc-20370028
病院での治療を続けながら、当院では身体の状態を確認しました
当院へ来られたときも、まず病院での診断や治療内容を確認しました。
顔面神経麻痺で一番大切なのは、「まず鍼灸をすること」ではありません。
先に病院で診断を受けることです。
ベル麻痺では、特に発症早期のステロイド治療が一般的な治療の中心になります。
そこを飛ばして、「鍼だけで何とかしましょう」という考え方は、僕は違うと思っています。
そのうえで、この方の身体を確認すると、首や肩まわりにもかなり強い緊張がありました。
長時間仕事をしていて、精神的にも余裕のない状態が長く続いていたそうです。
「肩もパンパンやん。顔のことばっかり気にしてたけど、身体もしんどかったでしょう?」
そう聞くと、「もうずっと肩凝ってました」と笑っておられました。
顔の症状が強いと、どうしてもそこだけに意識が向きます。
でも実際には、眠れているか、食事は取れているか、肩や首はどうか、仕事中の姿勢はどうか。
そういう身体全体の状態も確認しながら施術内容を考えました。
そこで当院では、首や肩まわりの緊張を確認しながら手技を行い、顔面部や首周囲には状態に合わせて鍼灸施術を取り入れました。
ただし、ここも大事なのでハッキリ書いておきます。
鍼灸でベル麻痺そのものが必ず治る、神経を再生できる、という意味ではありません。
病院での治療を基本としたうえで、患者さんの状態を確認しながら補助的に施術を行いました。
「病院か鍼灸か、どっちにする?」ではなく、必要な医療を受けたうえで、できることを考えていく。
僕はその考え方が一番いいと思っています。
出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/bells-palsy/diagnosis-treatment/drc-20370034
あれ?今ちょっと動いた?」小さな変化から始まりました
初回の施術後です。
顔の動きを一緒に確認していると、左側にほんのわずかな動きが見られました。
ご本人も鏡を見ながら、
「え?今ちょっと動きましたよね?」
と、かなり驚かれていました。
僕も「あ、ほんまや。さっきより反応してるな」と。
それまで1か月間、鏡を見てもほとんど変化を感じられなかったそうなので、ほんの少しの動きでも本人にとってはかなり大きかったと思います。
ただ、この一回の変化だけを見て、「鍼で神経が治った」と判断することはできません。
ベル麻痺そのものが回復していく過程で、ちょうど動きが出始めた可能性も当然あります。
ここを都合よく「一回の鍼で治った!」みたいに書いたら、そら話としては派手です。
でも、それでは正確じゃないですよね。
僕らが見ているのは、その日の一瞬だけではありません。
目が閉じやすくなっているか。
眉は動いているか。
口角の左右差はどうか。
前回と比較して、自然な表情が少しでも戻っているか。
そういう細かい変化を、毎回確認していきました。
ベル麻痺では、多くの場合、数週間から数か月の経過の中で徐々に顔の動きが戻っていきます。
少しずつ笑顔が戻る。その変化が一番うれしかったです
その後も、病院での経過を確認しながら施術を続けました。
最初はほとんど動かなかった眉が、少しずつ上がる。
口角の左右差も少しずつ小さくなる。
そして、笑ったときの表情が段々と自然になってきました。
ご本人が一番うれしそうだったのは、「顔が動くようになった」という数字のような話ではありません。
「人と話すとき、前ほど顔を気にしなくなりました」
この言葉でした。
いや、これ聞いたときは僕もうれしかったですね。
顔って、ただ筋肉を動かす場所じゃないですから。
笑う。
人と話す。
写真を撮る。
家族とご飯を食べる。
そういう毎日のコミュニケーションにずっと関係しています。
結果的に、この方は時間の経過とともに顔の動きがかなり戻り、自然に笑顔を作れるところまで改善していきました。
最初に来られたときの不安そうな表情と比べると、最後の頃は会話中に普通に笑ってくれるようになりました。
僕としては、それが一番印象に残っています。
もちろん、すべての方が同じ経過になるわけではありません。
でも、「もう1か月経ったからダメや」と一人で決めつける必要もありません。
顔の動きがおかしい場合は、まず医療機関へ。
そして診断を受けたうえで、まだ不安なことや身体のケアについて相談したいことがあれば、僕らにも話してください。
何でも一発で治します、なんてことは言いません。
でも、その人に今できることを一緒に考えることはできます。
長い回復期間になる場合もありますが、焦らず経過を見ながらやっていきましょう。
出典:https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/5457-bells-palsy





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