プロテインは「筋トレしている人専用」なのか?
「プロテインって、運動している人だけのものでしょう?」
整骨院でよく聞かれる質問です。私はトレーニングをしているので日常的にプロテインを摂っていますが、その姿を見て「自分は運動していないから関係ないですね」と言われることもあります。
まずはここを整理しておきたいと思います。
プロテイン=筋肉専用ドリンクではありません。
タンパク質は、筋肉だけでなく、内臓、皮膚、髪の毛、爪、血液、酵素、ホルモン、免疫物質など、体のあらゆる構造の材料です。
人間の体は約60%が水分、約15〜20%がタンパク質で構成されています。つまり、水の次に多い構成要素がタンパク質です。
生きている限り、タンパク質は常に分解と合成を繰り返しています。
これは運動している・していないに関係ありません。
タンパク質不足がもたらす影響
複数の研究を統合したシステマティックレビュー(非常に信ぴょう性の高い論文)では、タンパク質摂取量が不足すると、筋肉量低下、回復遅延、免疫機能低下、創傷治癒の遅延といった影響が出やすいことが報告されています。
特に高齢者では、摂取量が少ない群で筋力低下と転倒リスク増加が関連するという報告が繰り返し示されています。
また、慢性的に不足すると、筋肉量だけでなく基礎代謝も低下しやすくなります。
基礎代謝が落ちると、体脂肪が増えやすくなり、生活習慣病リスクも高まります。
つまり、タンパク質は「筋肉を大きくするため」だけでなく、「体の機能を維持するため」に必要なのです。

厚生労働省の基準は“最低限”
厚生労働省が示している推奨量は、成人男性約60g、女性約50gです。
しかしこの数値は「欠乏症を防ぐ最低ライン」です。
健康維持や筋肉量維持の観点からは、体重1kgあたり1.0g前後、高齢者では1.2g以上を推奨するレビューもあります。
体重60kgの方であれば、60g〜72g。
70kgであれば70g〜84g。
これを食事だけで毎日安定して摂るのは、意外と難しいのが現実です。
例えば、生卵1個約6g。鶏むね肉100gで約22g。
朝食がパンとコーヒー、昼が麺類中心、夜が軽め、という生活では簡単に不足します。
実際、現代人は1日あたり10〜20g不足しているケースも少なくないと報告されています。
運動していない人は摂る必要があるのか
ここが本題です。
筋トレをしていない人でも、タンパク質は必要です。
ただし「プロテインを必ず飲まなければならない」という意味ではありません。
食事で足りていれば不要です。
しかし、食事量が少ない、朝食を抜きがち、ダイエット中である、間食が糖質中心である、といったケースでは不足が起こりやすい。
その不足分を補う手段として、プロテインは合理的な選択肢になります。
プロテインは魔法の粉ではありません。
あくまで「タンパク質の粉末」です。
つまり、食品の一種です。
動物性と植物性の違いは何か
動物性タンパク質(肉・魚・卵・乳製品)は必須アミノ酸バランスが良く、消化吸収率が高いのが特徴です。
ホエイプロテインはロイシン含有量が高く、筋タンパク合成を刺激しやすいとされています。
一方、植物性タンパク質(大豆など)は脂質が少なく、腸への負担が比較的軽いという利点があります。
最近のメタ解析では、総摂取量が十分であれば、植物性でも動物性でも筋肥大効果に大きな差はないとする報告もあります。
つまり、重要なのは「種類」より「総量」と「継続」です。
年齢によって必要性は変わる
若年者は筋タンパク合成効率が高いため、通常の食事で足りることが多いです。
しかし30代以降は徐々に合成効率が低下します。
さらに高齢者ではアナボリックレジスタンスが起こり、同じ量では筋合成刺激が弱くなります。
そのため、高齢者ほど意識的にタンパク質を確保する必要があるとするレビューが増えています。
つまり、「若いから必要」「年を取ったら不要」ではなく、むしろ逆です。
加齢とともに、必要性は高まる可能性があります。

私自身のケースは特殊です
私は筋肥大を目的としており、動物性タンパク質を中心に1日110g以上摂取しています。
2年間で体重は約20kg増加しましたが、脂肪より筋肉が中心です。
ただし、これはトレーニングを前提とした量です。
一般の方が同じ量を摂る必要はありません。
大切なのは「自分に必要な量」を知ることです。
スポーツをしている子どもは何歳からプロテインを使うべきか
まず前提として、健康な子どもは通常の食事で十分なタンパク質を摂取できるのが理想です。
成長期の小学生〜中学生では、体重1kgあたり約1.0〜1.5gが一つの目安とされています。
体重40kgなら40〜60g、50kgなら50〜75g程度です。
3食しっかり食べ、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品が入っていれば到達可能な範囲です。
しかし、現実には朝食が軽い、昼が麺類中心、練習後に食事まで時間が空く、といった状況が多く、不足が起こるケースもあります。
その場合に「食事の補助」として少量(10〜20g)のプロテインを活用するのは合理的です。
重要なのは、プロテインを主役にしないこと。
あくまで土台は食事です。
30代〜40代は“静かな筋肉減少”が始まる
30代以降、意識しないと筋肉量は徐々に減少します。
特に運動習慣がない場合、年1%前後の減少が起こるという報告もあります。
この時期は「太っていないから大丈夫」と思いがちですが、筋肉が減って体脂肪率が上がる“隠れ肥満”が進行していることもあります。
体重1kgあたり1.0〜1.2gを目安に、不足分を補う形で15〜25g程度のプロテインを活用するのは現実的な選択です。
高齢者はむしろ積極的に考えるべき
高齢者ではサルコペニア(加齢性筋肉減少)が大きな問題になります。
システマティックレビューでは、体重1kgあたり1.2g以上の摂取が筋力維持に有利に働く可能性が示されています。
例えば60kgの方なら72g以上。
しかし食事量が減りやすく、消化機能も低下するため、実際には不足していることが多いです。
この場合、20g前後のプロテインは非常に実用的です。
若い人よりも、実は高齢者の方が恩恵を受けやすい可能性があります。
腎臓への影響は本当に問題なのか
「プロテインは腎臓に悪い」という話はよく聞きます。
しかし、健康な成人において体重1kgあたり2.0g程度までの摂取で腎機能に悪影響を示した明確な証拠は限定的です。
もちろん、既に腎疾患がある方は医師の管理下で調整が必要です。
しかし健康な方が適量を摂ることを過度に恐れる必要はありません。
飲むタイミングの科学
筋トレ後はタンパク合成が高まるため理にかなっています。
しかし一般の方であれば、1日の総量が最も重要です。
最近のレビューでは、「タイミングよりも総摂取量」が優先されるとする報告が増えています。
朝食で不足しているなら朝、間食が甘いもの中心なら置き換えとして活用するのが継続しやすい方法です。
結局、誰が飲むべきか
若くて食事が十分に摂れている人は必須ではありません。
しかし、食事量が少ない人、スポーツをしている子ども、忙しい社会人、高齢者には合理的な補助食品になり得ます。
私自身は筋肥大目的で高容量を摂っていますが、それは特殊なケースです。
一般の方は不足分を補う15〜25g程度で十分な場合が多いです。
プロテインは流行ではなく、「必要量を満たすための道具」です。
大切なのは、自分の体重、年齢、活動量に合わせて考えること。
何となくではなく、目的を持って選ぶ。
それが、健康的な体づくりにつながります。
井手でした。
