80代男性、脊柱管狭窄症と人工股関節の壁を超えて
こんにちは!鍼灸師の寺下です(^^)
今日は、私が担当させていただいた80代の男性のケースをご紹介します。
この方ね、本当に強いんです。
だって、人工股関節を入れて10年以上、しかも脊柱管狭窄症を抱えながらも、
毎日ワンちゃんとお散歩を続けてこられた方なんですよ。
でも、ある日、とうとうその“日課”が苦痛に変わってしまいました。
■「先生、散歩がしんどいんですわ…」
初めて来られたとき、開口一番こう言われました。
「先生、ワンコの散歩がね、最近ほんまにしんどいんですわ。痛くて歩けんようになったら、あの子も可哀想やから、どうにかしたいんです」
その言葉に胸を打たれました。
この方にとって、散歩はただの運動ではなく、生きがいだったんです。

お話を伺うと、右の股関節は10年以上前に人工関節に。
それ以前から、脊柱管狭窄症による間欠性跛行(歩くと痛く、休むとマシになる症状)と、
右足のしびれが続いていたとのこと。
整形外科でリハビリを頑張ってこられたものの、
ここ数年で状態が悪化し、最近では近所の公園まで歩くのもつらくなったそうです。
■「膝が真っすぐ伸びたらええんやけどなぁ…」
立ってもらうと、右膝が完全に伸びきらず、常に少し曲がった状態。
姿勢は前傾、歩くときは右足を引きずるようなフォーム。
「膝がもうちょっと伸びたらなぁ。せめてまっすぐにして、もう一回ワンコと散歩したいねん」
その願いを叶えるため、徹底的に膝の状態をチェックしました。
■ 膝が伸びない原因はどこにある?
長座(床に座って足を伸ばす姿勢)でも、仰向けでも膝が伸びきらない。
関節の動きそのものが硬いだけでなく、筋緊張と脂肪体の癒着が強い。
特に「膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)」と呼ばれる、
お皿の下のクッションのような部分がガチガチに固まっていました。
これ、地味なんですけど痛みの大きな原因なんです。
膝を動かすたびにこの部分が擦れて炎症を起こす――
だから、伸ばそうとすると痛い。

■ 「痛いとこ触らずに治す」アプローチからスタート
右股関節は人工関節、腰は狭窄症。
つまり、“どこを触っても痛い”状態。
そんな時は、いきなり患部をグイグイ押しても逆効果。
まずは「痛くない範囲で動きを取り戻す」ことが第一です。
超音波で深部の緊張を温めてゆるめ、
手技療法で筋膜を優しくリリース。
さらに鍼灸で血流と神経の通りを整える。
とにかく、“体がホッとする”ことを最優先に進めました。
■ 「あれ? 先生、なんか軽い気がする…」
施術後に立ち上がってもらうと、
ほんのわずかですが膝の伸びが良くなっていました。
歩いてもらうと、明らかに歩幅が広がっている。
「これや、これ! こんな感覚、久しぶりや!」
まるで何年も閉じ込められていた関節が、
少しずつ自由を取り戻したような表情。
この瞬間
“治る兆し”というのは、確かにあるんだなと感じました。
■ 次の壁は「脊柱管狭窄症」
膝の動きが少し改善したことで、
今度は腰の痛み(脊柱管狭窄症)に焦点を移しました。
狭窄症の厄介なところは、「神経の圧迫」と「血流の悪化」のダブルパンチ。
歩けば痺れる、立ち止まれば楽になる。
この繰り返しが、精神的にも辛いんです。
施術では、腰部・臀部の深層筋に超音波と鍼灸を組み合わせてアプローチ。
特に“多裂筋(たれつきん)”という小さな筋肉を丁寧にほぐすことで、
神経の通りを改善していきました。
また、人工関節を入れている右股関節への負担を減らすため、
「立ち方」「荷重のかけ方」「座る姿勢」も細かく指導しました。
■ インソールで“歩き方”を再教育
ある程度痛みが落ち着いてきたタイミングで、
当院オリジナルの医療用インソール(フォームソティックス・メディカル)を導入。
最初は「そんなんで変わるんか?」と懐疑的だった患者様も、
履いた瞬間に「おっ?」と顔を上げました。
「なんか、足が真っすぐなった気がするな…」
このインソール、実は“足の骨格”そのものを正しい位置に導く構造になっています。
歩くたびに足裏が整い、それが膝・腰・背骨まで影響するんです。
数日後
「先生、散歩のときの痛み、かなりマシや!」
あの笑顔、忘れられません。

■ “治してもらう”から“自分で治す”へ
調子が上がってくると、患者様の方から質問が増えました。
「家でもなんかできることあるか?もう少し頑張りたいんや」
この瞬間が一番うれしい。
“受け身”から“能動的”に変わった証拠です。
そこで提案したのが、ゴムチューブを使った簡単トレーニング。
足首の屈伸、膝の伸展、ふくらはぎの軽い負荷運動――
どれも10回×2セットほどのライトメニュー。
「これならできそうやな」と言ってくださり、
なんと今では5種類の運動を毎朝30分やるのが日課になりました。
80代とは思えない継続力。
「やらな落ち着かんのや」と笑いながら話される姿に、
こちらの方が元気をもらっています。
■ 二人三脚で進む“治療の旅”
今も週2回、通院を続けておられます。
毎回、「今日はこれで良かった?」「昨日の歩き方は悪かったかな?」と
熱心に質問してくださる姿勢には、本当に頭が下がります。
治療は一方通行ではありません。
**患者さんと一緒に作り上げていく“共同作業”**なんです。
この方のように、「治療を楽しむ」心を持てる人ほど、
回復スピードが早い――これは本当です。
🦴再びワンちゃんと歩けた日
■ 「先生、今日、ちょっと走ってみたんや」
ある日の施術中、いつも通り世間話をしていると、
患者さんがふと笑いながらこう言いました。
「先生、昨日、ワンコが急に走り出してん。
それでな、つい俺も走ってもうたんや。
そしたら……意外と走れたんや!」
思わず手が止まりました。
だってこの方、初診の頃は“膝を曲げるのもつらい”状態だったんです。
それが今では、犬と一緒に走れるまでになってる。
私たち施術者にとって、これほど嬉しい報告はありません。
■ 「膝が伸びる」=「人生が広がる」
リハビリや治療をしていると、「膝を伸ばす」という動作の大切さを本当によく感じます。
膝が伸びるということは、
・姿勢が整い
・歩幅が広がり
・転倒リスクが減り
・疲労が軽くなる
つまり、“人生の行動範囲が広がる”ということなんです。
高齢になるほど、膝が曲がったまま歩く人が多くなりますが、
その分、腰や背中、首にまで負担が出てきます。
この患者さんも最初は前傾姿勢が強く、杖を頼りに歩いておられました。
でも、治療と運動を続けていくうちに、
「足の裏で地面を押せる感覚」が戻ってきたんです。
これは、脊柱管狭窄症の圧迫が減っただけでなく、
足のアライメント(骨の並び)が整ってきた証拠でした。
■ “治す”ではなく“育てる”
膝が伸び始めたのは、治療3ヶ月目に入ってから。
でも、その変化は一気に来たわけではなく、
日々の積み重ねが“ある日、突然”結果として現れた感じでした。
この患者さんのすごいところは、
「施術を受けて終わり」にせず、家でもしっかり続けていたことです。
「先生が言うとった“1日30分トレーニング”、あれをやると気持ちがええんよ。
なんか体が“通電した”みたいにスイッチ入るんや」
もうね、この言葉には私も感動しました。
治療って、結局“習慣”なんです。
痛みを取るのはスタート地点。
「再発しない体を作ること」こそがゴール。
そして、そのゴールに向かうのは、施術者ではなく“ご本人”なんです。
■ インソールで変わる「歩行リズム」
膝の動きが安定してくると、次に重要になるのが“歩行リズム”です。
実は、脊柱管狭窄症の方って、歩くときのリズムが崩れていることが多いんです。
歩くたびに痛みを予測して体が無意識にブレーキをかける。
その結果、足が小刻みになり、余計にバランスを崩す。
この負のスパイラルを断ち切ったのが、あのフォームソティックス・メディカルのインソール。
「このインソール、履いてると足が“まっすぐ出る”気がする」
患者さんはそう言って、すっかりお気に入りになりました。
実際、足のアーチを支えることで膝への負担が分散し、
体重のかかり方が自然と中心線に戻るんです。
それにより、腰の回旋もスムーズになり、
狭窄症による神経圧迫の症状も軽減。
まさに、“足元から全身を変える”とはこのことです。
■ 「この子と、もう一回旅行に行くのが夢なんや」
施術中、患者さんがふとポツリとつぶやかれました。
「先生、昔はこのワンコ連れて、車であちこち行ったんや。
今は近所の公園までで精一杯やけど……もう一回、遠出したいな」
私は笑って返しました。
「行けますよ。ちゃんと体が準備できたら、必ず行けます」
そして半年後。
なんと、本当に実現されたんです。
■ 「先生、行ってきたで!」
その報告を聞いた日のことは今でも忘れません。
「先生、行ってきたで! 淡路島まで!ワンコも一緒や! 海岸歩いたら、涙出てきたわ」
もう、その笑顔を見た瞬間、私も泣きそうになりました。
旅行中も、朝の30分運動を欠かさなかったそうです。
旅館の部屋でゴムチューブを使って筋トレ。
「せっかくやから、ワンコにも見せたったわ(笑)」と。
人って、本当に変われるんだなと思いました。
■ 80代でも遅くない。“身体は応えてくれる”
よく「もう歳だから…」とおっしゃる方がいます。
でも、この患者さんを見ていると、それはただの“思い込み”だと感じます。
筋肉も神経も、使い方を変えれば何歳からでも変化します。
年齢を重ねていても、「変わりたい」と思う気持ちがある限り、
身体はちゃんと応えてくれるんです。
実際、今ではこの方、毎週来られるたびに新しい質問をしてくださいます。
「先生、次はどこ鍛えたらええかな?」「このストレッチ、もうちょっと強くしてもええ?」
まるで学生のような探究心。
そのエネルギーに、こちらが元気をもらってます(笑)
■ “治療家冥利に尽きる”とはまさにこのこと
痛みが消える瞬間、動きが変わる瞬間、
患者さんの顔がパッと明るくなる瞬間。
そのすべてが、私たち治療家にとっての“ご褒美”です。
この80代男性のケースは、
「人は何歳からでも取り戻せる」――その証明でした。
ワンちゃんとの散歩を再び楽しめるようになった今、
次の目標は「旅行先で階段を登ること」だそうです。
きっと、それもすぐに叶うでしょう。
だってこの方、努力を楽しめる人ですから。
■ 最後に一言
もしあなたが、
「もう歳だから…」
「痛いから動けない…」
と諦めかけているなら、ぜひこの方のことを思い出してください。
痛みの先には、必ず“笑顔の未来”が待っています。
そしてその第一歩は、意外と小さなもの。
今日のウォーキング5分。
寝る前のストレッチ。
その一つひとつが、未来の自分を作ります。
私たちはそのお手伝いをするだけです。
「先生、ありがとうな。次はワンコ連れて山登るわ!」
そんな言葉をもらえる日が、治療家にとっての最高の幸せです。
🌿リード鍼灸整骨院では、年齢や症状に関係なく「もう一度動ける体」を一緒に作っていきます。
どんなお悩みでも、まずはご相談ください。
あなたの“次の一歩”を、私たちが全力でサポートします。
訪問診療も行っておりますので、ぜひご連絡ください。健康保険も適用できます!
腰痛治療についてはこちら


この記事へのコメントはありません。