歩けなくなる不安の中で
「散歩がしたい」その気持ちを一番大切にした症例
こんにちは!寺下です。
今回お話しするのは、80代の男性の方です。
初めてお会いしたとき、真っ先に伝えてくださった言葉は
「とにかく、また散歩がしたいんです」
というものでした。
この一言に、この方のこれまでの苦しさと、今の切実な思いがすべて詰まっているように感じました。
長い手術歴と、それでも続けてこられた生活
この方は、50代の頃に
頸椎の手術を1回、腰椎の手術を2回
経験されています。
それでも、
デイサービスには週2回通い、
体を動かす習慣を続け、
月に2回ほどはマッサージにも通われていました。
杖を使いながらではありますが、
散歩も日課にされていたそうです。
「手術は多かったですけど、動けていました」
と話されていたのが印象的でした。
徐々に強くなっていった痺れと不安
ところが、ここ数か月で状況が変わってきました。
手の痺れ。
足に力が入りにくい感じ。
足裏まで広がる下肢全体の痺れ。
最初は
「ちょっと調子が悪いのかな」
くらいに思われていたそうですが、
次第に
「明らかにおかしい」
と感じるほど、痺れも力の入りにくさも強くなっていきました。
これまで杖をついて散歩できていたのに、
歩くのが怖くなってきた。
「このまま歩けなくなるんじゃないか」
その不安が、毎日頭から離れなかったそうです。
下肢脱力の記事出典
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まずは今の状態を一緒に確認する
施術に入る前に、私が一番大切にしたのは、
今の状態を共有することでした。
「どれくらい歩けるのか」
「どこが一番しびれるのか」
一緒に確認しながら、検査を行いました。
歩いていただくと、
足の力で前に進むというより、
手で体を支えながら歩いている状態でした。
ご本人も
「足が出ない感じがします」
と、はっきり感じておられました。
痺れもかなり強く、
無理に頑張って歩いている印象でした。
施術で一時的に見えた変化
痺れの原因になっていそうな部位に対して、
超音波施術、手技療法、鍼施術を行いました。
施術前、
椅子から立ち上がる際には、
必ず手で体を支えておられました。
施術後、
「一度、手を使わずに立ってみましょうか」
と声をかけると、
ゆっくりですが、手を使わずに立ち上がることができました。
その瞬間、
ご本人の表情が少し明るくなったのを覚えています。
「立てましたね」
そう言うと、
「ほんまですね…」
と、少し驚いたように話されていました。
しかし、続いた違和感
施術後は状態が良くなるものの、
2週間ほど経つと、
さらに足に力が入らない、
動かしづらい状態が出てきました。
この変化は、正直、私自身も気になりました。
「良くなったり、悪くなったり」
ではなく、
明らかに
「落ちてきている」
という印象だったからです。
立ち止まるという判断
この時、私の中で強く思ったのは、
ここで無理に施術を続けるべきではない、
ということでした。
短い期間ではありましたが、
この方とは信頼関係を築けていたと思っています。
だからこそ、
はっきりとお伝えしました。
「一度、病院でしっかり検査を受けてください」
「今の変化は、見逃してはいけない気がします」
最初は不安そうでしたが、
私の話を受け止めてくださり、
病院で検査を受けることになりました。
病院で分かった本当の原因
検査の結果、
胸椎の神経が圧迫されていることが分かりました。
すぐに手術が必要な状態で、
そのまま手術となりました。
手術後、
歩行はできるようになったと聞き、
本当に安心しました。
痺れはまだ少し残っているとのことですが、
命や歩行に関わる大きなリスクは回避できました。
退院後、
再び訪問を再開させていただくことになっています。
胸椎異常の記事出典
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今回の症例から強く感じたこと
この症例を通して、
改めて感じたのは、
見極めの大切さです。
施術で一時的に良くなることはあります。
でも、その裏に
もっと大きな問題が隠れていることもあります。
無理に
「治そう、治そう」
と続けることが、
必ずしも患者さんのためになるとは限りません。
今後の生活、
これからの人生を考えたとき、
何が一番大切なのか。
それを一緒に考え、
必要なタイミングで医療につなぐことも、
私たちの大切な役割だと感じました。
胸椎異常リハビリ出典
最後に
「散歩がしたい」
その気持ちは、今も変わっていないと思います。
遠回りに見える判断だったかもしれません。
でも、歩けなくなるリスクを防げたことは、
何より大きな意味があったと感じています。
これからは、
手術後の体と向き合いながら、
無理なく、安心して生活できるよう、
寄り添っていきたいと思っています。
今回の症例は、
治すことだけでなく、
守ることの大切さを教えてくれた症例でした。
良くなる反応があったからこそ、違和感を見逃したくなかった
施術をすると、確かに反応はありました。
立ち上がりが楽になる。
一時的に足に力が入る。
その変化を目の前で見て、
「もう少し続ければ、もっと良くなるかもしれない」
そう思う気持ちが全くなかったわけではありません。
でも同時に、
私の中には拭えない違和感がありました。
良くなったあと、
元に戻るのではなく、
前よりも落ちてきている
そんな感覚があったからです。

症状だけでなく「流れ」を見る
体を診るとき、
その時の症状だけを見るのではなく、
時間の流れを見るようにしています。
この方の場合、
・手術歴が複数ある
・しびれが上下肢に広がっている
・力が入りにくくなってきている
・回復よりも低下のスピードが勝っている
これらが重なっていました。
施術で一時的に変化が出ることと、
体の状態が本当に回復しているかどうかは、
必ずしも一致しません。
ここを見誤ると、
大切なタイミングを逃してしまいます。
伝えることは、勇気がいる
「病院で、もう一度しっかり検査をしてください」
この言葉を伝えるのは、
正直、少し勇気がいりました。
施術を期待して来てくださっている中で、
「ここではなく、病院へ」
と伝えることは、
簡単なことではありません。
でも、
この方のこれからの生活を考えたとき、
どうしても伝えなければならない言葉でした。
信頼関係があったからこそ、受け止めてもらえた
短い期間ではありましたが、
日々の会話や施術を通して、
信頼関係は少しずつ築けていたと思います。
だからこそ、
私の言葉を真剣に受け止めてくださり、
病院での検査につながりました。
もし、
「もう少し様子を見ましょう」
と言っていたら。
そう思うと、
今でも少し背筋が伸びる思いがします。
本当の原因が分かったとき
胸椎の神経が圧迫されていた。
すぐに手術が必要な状態だった。
その話を聞いたとき、
まず最初に出た気持ちは、
見逃さなくてよかった
という安堵でした。
そして、
無事に手術が終わり、
歩行ができるようになったと聞いたとき、
心からほっとしました。
退院後、再び関わらせていただく意味
痺れはまだ残っている。
完璧に元通り、というわけではありません。
それでも、
歩ける。
散歩を目指せる。
この「可能性」が残ったことは、
とても大きいと感じています。
退院後、
再び訪問を再開させていただくことになりました。
今後は、
手術後の体を守りながら、
不安を溜め込まないよう、
心と体の両方に寄り添う関わりをしていきたいと思っています。
今回の症例で強く感じたこと
治療を続けることが、
必ずしも正解ではありません。
良くなる反応があるからこそ、
立ち止まって考える必要がある場面もあります。
「今、この方にとって何が一番必要か」
それを見極めることは、
とても大切な仕事だと改めて感じました。
最後に
「散歩がしたい」
その気持ちを、守ることができた。
それが、今回の症例で一番大きな意味だったと思います。
これからも、
ただ症状を見るのではなく、
その人の生活や想いまで含めて、
関わっていきたい。
今回の症例は、
その姿勢を改めて確認させてくれた、大切な経験でした。
