「気にせずテニスがしたい」
15年前の半月板損傷を抱えた40代男性
こんにちは、矢吹です。
今日は「半月板損傷」と「前十字靭帯の不安定性」を抱えながら、15年以上“ごまかしながら”テニスを続けてこられた40代男性の症例をご紹介します。
結論から言うと、この方は
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日常生活の痛み → 数回の施術でほぼゼロ
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テニス中の不安感 → インソール併用で大幅改善
というところまで回復されました。
ただ、ここに至るまでの背景を追っていくと、
「半月板だけの問題ではなかった」 というのがよく分かります。
テニスと半月板・靭帯の関係はこちら
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高校〜大学までガッツリテニス。そこから始まった膝との付き合い
患者様は40代男性・営業職。
高校から大学卒業まで、ずっとテニス部でバリバリの体育会系。
社会人になってから数年間は仕事が忙しく、ラケットから離れていたそうです。
20代半ばで少し落ち着いたタイミングで、
「やっぱりテニスがしたい」
とコートに復帰。
ところが、久しぶりの本気プレー中、左膝に「ズキッ」と鋭い痛みが走り、そのまま動けなくなってしまいました。
病院を受診したところ、
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半月板損傷
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手術が必要なレベルではない
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安静と時間経過で様子を見ましょう
という説明のみで、リハビリらしいリハビリもなく終了。
そこから約15年間、
「完全には治っていないけど、だましだましテニスを続けている状態」が続いていました。
15年間の“ごまかし”: 痛みと付き合いながらのテニス
問診で印象的だったのは、この一言でした。
「痛いのは痛いんですけど、もう“これが普通”になっていて…」
具体的には、
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長く歩いたり階段を降りるとズキズキする
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冷えると膝が重だるい
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テニスの後半になると特に怖くなる
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全力で踏み込むと“抜ける”ような不安感がある
といった状態でした。
ただし、
「常に激痛」というわけではなく、
日によって波があったり、テニスの内容によっても痛み方が変わる。
こういうケースは、
“組織そのものの損傷” + “身体の使い方のクセ” がセットになっていることが多い です。
「半月板だけのせい」にするには違和感がありました
実際に膝を触り、動きをチェックしていくと…
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半月板損傷歴のわりに、
「ここから先は触るのもイヤ!」というレベルの激痛は少ない -
むしろ
「ねじった時」「捻りながら体重が乗った時」に不安感が強い
そんな印象でした。
詳しく評価していくと、
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前十字靭帯のゆるさ(不安定性)
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膝関節の軽いぐらつき
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大腿部(前・外側)とふくらはぎの強い筋緊張
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そして 股関節の内旋(内向きねじれ)
このあたりがハッキリと出ていました。
ここで大事なのは、
「半月板を傷めたから痛い」
だけでは説明がつかない要素が揃っていた
という点です。
膝のねじれと半月板損傷の関係はこちら
股関節の“ねじれ”と膝の不安定性
膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)の間にあります。
そのさらに上には股関節があり、ここが内側にねじれた状態(内旋)が強いと…
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膝は常に“内側へねじられた状態”で動かされる
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半月板や靭帯に、じわじわとストレスがかかり続ける
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一歩一歩の着地で、少しずつ削られていく
という状況が生まれます。
今回の患者様の場合、
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股関節は内旋位で固まり気味
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膝の前十字靭帯はややゆるく、不安定性あり
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その“グラグラ感”を、太もも前面・外側の筋肉が必死でカバーしている
結果、大腿部と下腿の筋肉は ガチガチ。
膝関節には“逃げ場のないストレス”がかかっている状態でした。
半月板損傷は確かに過去の大きなイベントですが、
今の痛みを作っているのは“身体全体のバランスの崩れ”
というのが、初回の印象でした。
患者様の希望はシンプルで、でも重い
この方が何度も繰り返していた言葉が、
「もう、気にせずテニスがしたいんです」
という一言でした。
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痛みゼロじゃなくてもいい
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でも、「またやったらどうしよう」という不安を減らしたい
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できれば、もう一段ステップアップのテニスがしたい
膝の痛み自体よりも、
“膝をかばうことで、テニスの楽しさが削られている”
そこに一番ストレスを感じておられました。
治療方針:膝だけを見るのをやめる
こういった背景を踏まえて、方針は最初からハッキリしていました。
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大腿部・下腿部の緊張を徹底的に緩める
→ 膝周りの“鎧”を一度脱がせるイメージ -
股関節の内旋をほどき、外旋方向へ誘導する
→ 膝にかかっているねじれストレスを根本から軽減 -
膝関節そのものを直接いじり過ぎない
→ まず「周囲が変わることで膝が動きやすくなる」状態をつくる
具体的には、
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手技療法で大腿部前面・外側・内側、ふくらはぎをしっかり緩める
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鍼治療で股関節周囲(特に内旋筋)をターゲットにする
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必要に応じて膝のモビリゼーションも行うが、“攻めすぎない”
という組み立てです。
膝は、いろんな関節の“真ん中に挟まれている関節”です。
だからこそ、膝だけを見ていても、なかなか根本には届きません。
初回〜2回目:まずは“日常生活で気にならない膝”へ
実際に施術を開始してみると、
反応はとても素直でした。
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1回目の施術後:
「階段の下りが、さっきより明らかにラクです」 -
2回目の来院時:
「日常生活では、正直ほとんど膝を意識しなくなってます」
この時点で、
日常生活レベルの痛みはほぼクリア。
ここから先は、
「テニスをしても気にならないレベル」
「思い切り踏み込める膝」
を目標に、もう一段ステップを上げていく段階に入っていきます。
その中でポイントになったのが、
“足部”と“インソール”の存在 でした。
ここからは、前半で紹介した患者さんの症例を土台にして、
「なぜ膝の痛みが取れたのか」
「なぜ半月板損傷+前十字靭帯の不安定さでも改善したのか」
「なぜインソールが仕上げになったのか」
この3つを、できるだけ専門的でありながら、噛みくだいた形で深掘りしていきます。
膝の痛みに対するインソールの効果はこちら

◎ 半月板損傷なのに“激痛ではない”理由
まず多くの人が誤解しているのが、
「半月板が損傷した=ずっと激痛」
という思い込みです。
人体はそんなに単純ではありません。
半月板が傷ついていても、
・筋肉がカバーしてくれている
・可動域が狭いことで痛みが表面化していない
・脳が痛みに“慣れて”いて危険信号を弱めている
こういった状態が重なって、痛みの強さが“抑え込まれている”ケースが存在します。
今回の患者さんはまさにこれで、
長年の compensatory pattern(代償動作)が強すぎて、
「痛みよりも動きの悪さが先に目立っている」
そんな膝でした。
こういうタイプは、筋緊張をほぐして動きを戻すと
“隠れていた本当の問題” が顔を出すので、
最初の治療は慎重に進める必要があります。
◎ 大腿部・下腿部・臀部の筋肉が果たしている役割
膝は単体で存在しているように見えて、
構造上 “大腿骨・脛骨・足部の3つのバランス” の上に成り立っています。
つまり、膝だけ触っても完治しません。
特にこの患者さんの場合、
・大腿外側広筋のガチガチの緊張
・ハムストリングスのアンバランス
・股関節の内旋のクセ
これらが「膝のクッション機能」を壊していました。
股関節の内旋が強いと、
膝は自然と内側に入り(Knee-in)、
前十字靭帯にも余計なストレスが走る。
テニスの踏み込みやターンで痛みが出るのは必然です。
だから私は、半月板だけを見るのではなく、
“膝にかかっている負担の流れ”を先に変えた
というわけです。
その結果、初回~2回目で日常痛が消えました。
◎ 「日常生活は平気なのに、テニスだけ痛い」この謎
テニスは
・急停止
・切り返し
・サイドステップ
・ひねり
が多く、膝関節の負荷は日常の5〜10倍になります。
日常生活の痛みが消えるのはスタート地点で、
本当の勝負はここから。
患者さんが“ラストまで残っていた小さな痛み”は、
半月板が原因ではなく…
足部の崩れ(アーチ低下・過回内)
が膝に負担を積み上げていたんです。
これは見逃しやすい部分ですが、
膝の痛みの“最後の砦”はほぼ足です。
◎ インソールが仕上げになったメカニズム
この患者さんが言った
「久しぶりに母指球を使って歩いてる感覚」
という言葉はとても重要です。
母指球が使えていないと、
・踏み込みが弱くなる
・膝が内側に流れやすくなる
・股関節の外旋筋がサボる
この連鎖が起こります。
つまり、膝痛の本当の原因のひとつが
「母指球の機能低下」 だったということ。
僕としては想定通りの結果で、
インソールを入れる前から“足の問題”は感じていました。
● インソールが膝に効く3つのポイント
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踵(かかと)を安定させて膝のねじれを止める
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土踏まずを支えて衝撃吸収を正常化する
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母指球を使える位置に誘導する
これが揃うと、テニスの衝撃は膝ではなく
“足→股関節→体幹へ”と流すことができます。
だから膝が痛まなかった。
◎ なぜ“インソール × 鍼 × 手技”の組み合わせが最強なのか
鍼と手技は
「筋肉・関節の状態を整える」
インソールは
「足元の土台を整える」
この2つは役割が全く違いますが、
重ねることで 効果は何倍にも跳ね上がります。
家の建築で例えると、
・鍼+手技=壁や屋根の修繕
・インソール=基礎工事
という関係です。
壁を直しても、土台が傾いていたら壊れますよね。
今回の患者さんはまさに、
この2つが“理想的に噛み合った症例”でした。
◎ 再発しないために必要なこと
膝の痛みは取れる。
でもスポーツマンが同じ痛みを繰り返す理由は簡単で、
「動作のクセ」がそのまま残っているから。
だから私は毎回、
・股関節の外旋可動域
・膝のアライメント(向き)
・足部の接地
これらを微調整しながら施術していきました。
今のところ、とても良い状態を維持しておられます。
結論
膝痛は“損傷の大きさ”と“痛みの強さ”が一致しないことが多く、
むしろ筋肉・股関節・足部との連動が壊れているケースが大半です。
今回の症例はその典型で、
・15年間のクセ
・半月板損傷
・前十字靭帯の不安定さ
・股関節の内旋
・足部アーチの崩れ
これらが重なって痛みが出ていました。
しかし、正しい順番で
①筋緊張の解除
②股関節の修正
③膝のアライメント調整
④インソールで土台補正
これを行えば、
長年の膝痛でも普通に競技復帰できる。
そう確信できた症例でした。

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