70代女性・過敏性大腸症候群
「食べるのが怖い」その気持ちに寄り添いながら、少しずつ取り戻した日常
こんにちは!寺下です!(^^)!
担当した70代の女性患者さんのお話を、今回は前半として書き残しておきます。
この患者さんは、過敏性大腸症候群(IBS)と側弯症を抱えており、特にこの1年は症状が悪化。
食事をするたびに腹痛が起こり、下痢と便秘を繰り返し、外出もままならない状態でした。
「食べるのが怖いんです・・」
初回の問診で、その方は静かにそう言われました。
ただの腹痛ではありません。
何年も続く不安とストレスで、表情には疲れがにじんでいました。
今回は、その患者さんがどのように日常を回復していったかを丁寧にお伝えします。
過敏性大腸症候群とは、こちら
少しずつ取り戻していく “ふつうの生活” その一歩一歩を支える
治療を進めていくにつれて、患者さんは小さな変化を実感されることが増えていきました。
「食べた後の痛みが少しマシな日がある」
「朝起きる時のお腹の張りが減ってきた」
「外を歩く時に、前より不安が小さい」
この“ほんの少しの変化”こそが、過敏性大腸症候群の改善ではとても大切です。
症状の強い方は、その一歩一歩がどれほど大きな意味を持つか、治療をしていると身に沁みて感じます。
そして、ここからさらに状態が良くなっていくきっかけが訪れました。
お腹の力が戻り始めたサイン
呼吸が深くなり、姿勢が変わっていく
ある日の施術中、患者さんの呼吸に変化がありました。
今までは緊張が強く、胸や肩だけで浅く呼吸をしていたのが、
お腹まで空気が届くように、ゆっくり深く呼吸できるようになってきたのです。
人の身体は不思議なもので、
呼吸が変わると内臓の動きも変わり、
内臓が変わると気持ちまで穏やかに変化していきます。
過敏性大腸症候群では腸の動きが乱れますが、
それと同時に横隔膜や腹筋群の働きが低下しがちです。
呼吸が深くなることは、腸が正常なリズムを取り戻す重要なサインです。
施術のたびにこの変化を確認できたことで、治療はひとつの大きな段階を越えたと感じました。
過敏性大腸症候群と呼吸についてはこちら

“無理なく食べる” という新しいスタートライン
1ヶ月を超えた頃から、患者さんは
「固形物を少し食べてみようと思います」
と話してくれるようになりました。
もちろん、いきなり多くは食べません。
柔らかいもの → 少し噛むもの → お腹に優しい固形物
という順番で、自分のペースを守りながら挑戦されました。
最初は、「また痛くなるのでは…」という恐怖心がありましたが、
お腹の調子が整い始めていたこともあり、食後も大きな痛みは出ませんでした。
初めてその報告を聞いた時は、本当に嬉しかったです。
過敏性大腸症候群の治療は、
“食べることへの恐怖” を取り除く過程でもあります。
固形物が食べられるという事実が、患者さんにとって大きな自信に変わった瞬間でした。
家でのセルフケアが、改善に明確な追い風を与えた
施術を続けていく中で、患者さん自身も積極的にセルフケアを取り入れてくださいました。
・お腹を冷やさない
・夜に深い呼吸を数分行う
・食後すぐに横にならない
・温かい飲み物で腸を整える
・簡単な体幹トレーニング
この積み重ねが、治療効果を一段と引き上げたのです。
特に意識していただいたのが、
“お腹を温める”ということ。
過敏性大腸症候群の患者さんは、腹部が冷えやすく、腸が緊張しやすいです。
お腹を温めるだけでも
腸の動きは驚くほど変わります。
実際に患者さんも
「夜に腹巻きをするようになってから、翌朝のお腹の調子が違う」
と話されていました。
治療とセルフケアの相乗効果で、よい変化はさらに加速していきました。
デイサービスでの運動にも少しずつ参加できるように
来院された当初は腹痛のせいで、週1回のデイサービスの運動も休みがちでした。
しかし、治療が進むにつれ
「今日は行けました」
「体操も全部できました」
と報告していただく回数が増えていきました。
これは純粋に体が良くなったこともありますが、
“動いても大丈夫かもしれない”
という前向きな気持ちが芽生えたことも非常に大きいです。
身体が改善してくると、心も一緒に上がってくる。
治療中に何度もそれを感じる瞬間がありました。
月1回の外出が出来るように
「予定を立てる喜び」が戻ってきた
施術を開始して数ヶ月が経ち、患者さんからひとつの報告がありました。
「今月も外出の予定を入れました。久しぶりに楽しみです」
この言葉は、治療者として本当に心に響く瞬間です。
ずっと“食事と腹痛の不安”に縛られていた生活から、
予定を立てる楽しみを取り戻すことができた。
当たり前のようで、とても大きな変化です。
腹痛が完全に消えたわけではありません。
時々痛みは出ます。
しかし、その痛みは以前より軽く、
日常を妨げるほどの強さではなくなっていました。
患者さん自身も
「また少しずつ出来ることが増えて嬉しい」
と笑顔で話され、こちらも思わず胸が熱くなりました。
過敏性大腸症候群と鍼灸についてはこちら
過敏性大腸症候群は“焦らない治療”が鍵
波を理解し、上手に付き合いながら改善へ
過敏性大腸症候群は
・気温
・ストレス
・食事内容
・睡眠
・ホルモンバランス
など、あらゆる要素の影響を受けます。
良くなる日と悪化する日が混ざりながら、
ゆっくりと改善していく疾患です。
患者さんの身体は確実に前に進んでいますが、
これからも波はあるはずです。
その波を一緒に乗り越えていくために、
施術はこれからも“その日の体調に合わせて”選んでいきたいと考えています。
施術中は患者さんの反応を細かく観察し、
必要であれば刺激を弱めたり、
逆に身体が受け入れられそうなら一歩進んだ施術を行う。
その積み重ねが信頼関係となり、
治療効果にも深く関わっていきます。
鍼灸治療の奥深さと、人とのつながり
過敏性大腸症候群は、薬だけでは改善しきれない部分が多く、
身体と心が密接に影響し合う疾患です。
鍼灸治療は、
“弱った身体に寄り添いながら整えていく”
という特徴があります。
刺激の強さが治療効果を決めるのではありません。
患者さんに合った刺激量、
安心して受けられる空間、
信頼して任せてもらえる関係性。
こうした“整体や鍼灸の根本”が、
今回の改善に大きく作用したと強く感じています。
「また来ますね。来ると安心するから」
そう言っていただけたことが、何よりの励みです。
これからも
患者さんの日常が少しずつ広がるように
現在も週に1回、患者さんは来院されています。
治療のたびに体調を丁寧に伺いながら、
・自律神経
・消化器の働き
・姿勢
・冷え
・呼吸
これらを中心に整えていきます。
焦らず、一歩ずつ。
患者さんが再び、
「食事を楽しむ」「出掛ける」「予定を立てる」
そういった当たり前の日常を過ごせるように、
これからもサポートしていきたいと思います。
“食べることが不安になる”という、生活を縛る苦しさ
症状が始まったのは2〜3年前。
徐々に食事のたびに腹痛が出るようになり、ここ1年で一気に悪化。
問診を続けていくと、食べることにまつわる不安が生活すべてを覆っていました。
・固形物を食べるとほぼ100%下痢
・外食は完全に不可能
・出掛けるときは必ずトイレを確認
・買い物中もお腹が気になって楽しめない
・食事量が減り、体重も落ちてきた
・デイサービスの運動も腹痛で休みがち
・大好きなお酒も飲めない
・毎日が“食べる不安”で終わる
本来、食事は楽しみであるべきなのに、この方の場合は“恐怖の引き金”になっていました。
それが対人関係や外出、生活すべてに影響していたのです。
そしてもう一つ、この方を苦しめていたのは「異常が見つからない」という状況でした。
過敏性大腸症候群とは
検査で異常が出ないのに症状だけが強く出る、やっかいな疾患
病院で検査をしても、潰瘍も炎症もなし。
腸にも目立った異常はない。
なのに、腹痛・下痢・便秘が何年も続く。
これが過敏性大腸症候群(IBS)の特徴です。
機能性疾患と呼ばれ、臓器に“異常そのもの”があるのではなく
自律神経が乱れ、腸の働きが過剰になったり弱くなったりして症状が現れます。
そのため、外からは「お腹が弱いだけ」に見えがちですが、本人にとっては生活に直結する大きな問題です。
この患者さんも、
「食べる → すぐ痛くなる → また不安になる」
という悪循環にはまっていました。
側弯症との組み合わせが、さらに症状を複雑化させていた
触診を進めていく中で、側弯症の影響も無視できませんでした。
背骨の歪みは自律神経の通り道を乱します。
その結果、胃腸の働きが安定しないことはよくあります。
実際に触れてみると、
・背中から腰にかけて強い緊張
・腹部の冷え
・肋骨の動きの左右差
・呼吸が浅くなりがち
こういった所見がありました。
腸に直接アプローチする前に、
まずは自律神経の力を取り戻す必要がある。
その判断から治療方針を組み立てていきました。
初回から1ヶ月
身体の緊張を解くため “とにかく優しい刺激” の治療を選択
初回のカウンセリングで、患者さんは
「刺激の強い治療は怖いです。お腹がまた痛くなるのでは…」
と不安そうに話していました。
過敏性大腸症候群は、刺激過多が悪化の原因になるケースがあるため、言葉の通りに受け止め、施術は慎重に選択しました。
最初の1ヶ月間は
・自律神経を整えるための鍼
・背中の緊張をゆるめる超音波
・お腹を温めるための優しいお灸
・胸椎と肋骨の動きを改善する施術
・深い呼吸を誘導するケア
これらを中心に構成しました。
刺激は最小限。
けれど確実に身体が受け入れられる量。
施術直後に劇的な変化が出るタイプではありませんが、積み重ねていくうちに身体の反応が変わってきます。
そして、1ヶ月を過ぎた頃に患者さんからこう伝えられました。
「夜に痛みで起きる回数が減ってきた気がします」
この言葉は、とても大きな一歩でした。
過敏性大腸症候群の回復は“山型”ではなく“階段型”
過敏性大腸症候群の改善は、
ある日突然良くなるわけではありません。
症状の波はありながら、
階段を一段ずつ上がるように少しずつ変化していきます。
夜の痛みが減るというのは
自律神経が整い始め、腸の緊張が和らぎ始めたサイン。
施術者としても、このタイミングがとても大切です。
患者さん自身が
「変わってきているかもしれない」
と感じ始めたとき、その方の身体は確実に前に進み始めています。
信頼関係が生まれた瞬間
ここから治療は一段階進む
ある日の施術後、患者さんがこう言いました。
「ここに来ると、お腹の調子が落ち着く気がするんです」
その言葉は、治療者として何より嬉しい瞬間でした。
治療は“身体だけではなく気持ちにも働く”ものだからです。
この頃から施術内容を少しずつ広げ、
・消化器の働きを整える鍼
・足のツボへの軽い刺激
・腹部のやさしい手技
・冷えを改善するケア
を追加していきました。
患者さんの身体は敏感なので、毎回反応を見ながら慎重に調整しましたが、変化は確実に積み上がっていきました。
「固形物を少し食べても大丈夫でした」
「外出するときの不安が軽くなってきました」
その報告が少しずつ増え、こちらも心の底から嬉しくなりました。

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