妊娠中の不安やつらい症状に鍼灸師ができること
梅雨のジメジメを抜けると、いよいよ本格的な夏がやってきますね。
僕は夏が大好きなんですが、患者さんの中には「この暑さ、本当にしんどいです…」と顔をしかめる妊婦さんも多いんです。
「ただでさえ体が重いのに、暑さでさらにだるい」
「眠いし、むくむし、つわりで食欲もわかない」
…本当に大変だと思います。
そこで今日は、妊婦さんがこの時期に少しでも楽に過ごせるように、僕の臨床経験や東洋医学的な考え方も交えてお話ししていきます。
■妊娠初期のつらい「つわり」
妊娠中の体の変化で最初に多くの方を悩ませるのが、やっぱり「つわり」ですね。
「食べたら気持ち悪い」「食べなくても気持ち悪い」「朝起きたらとりあえず吐く」…そんな声を毎日のように聞きます。

西洋医学的な解釈
ホルモンバランスが急激に変化し、脳の嘔吐中枢が刺激されて起こる。
特に黄体ホルモン(プロゲステロン)が増えると、腸の動きが鈍くなりガスが溜まりやすくなる。
これがムカムカや吐き気につながる。
東洋医学的な解釈
つわりは「母体の解毒反応」として考えます。
東洋医学では妊娠期を5つに分け、それぞれの臓腑に関連づけて考えるんです。

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妊娠1〜2ヶ月:肝
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妊娠3〜4ヶ月:心
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妊娠5〜6ヶ月:脾
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妊娠7〜8ヶ月:肺
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妊娠9〜10ヶ月:腎
特に初期のつわりは「肝」によるものとされ、体の中の毒素や不要なものを外に出そうとする働きの一部と考えられています。
面白いのは「肝を助ける味は酸味」だということ。
妊婦さんがレモンや梅干しなど酸っぱいものを欲するのは、身体が自然に欲しているサインなんです。
■「レモン丸かじり」の意味
実際に、妊婦さんが「レモンをかじったら意外と酸っぱく感じなかった」と話すことがあります。
これは体が酸味を欲している証拠で、酸味が足りていないから強く感じないんです。
「身体が酸っぱいものを求めている=肝を助けてほしい状態」なんですね。
もちろん、毎日レモンを丸かじりしなさい!というわけではありません(笑)
でも酸味のあるフルーツや酢の物をちょっと取り入れるだけでも、つわりのつらさが軽くなる人も多いんです。
■むくみの正体と「冷え」の落とし穴
つわりが落ち着いてくると、今度は「むくみ」で悩む妊婦さんが増えてきます。
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急激な体重増加
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運動不足
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塩分の摂りすぎ
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妊娠によるホルモン変化
これらが重なってむくみやすくなるんですが、僕が注目しているのは「冷え」です。
「え?妊娠中って暑いのに冷え?」と思われるかもしれません。
でも実は、妊婦さんは“内側から温められすぎている”状態なんです。
赤ちゃんを包む羊水はママの体温より高いので、常に「湯たんぽを抱えている」ような感覚になります。
だから外側は暑く感じて、ついつい薄着や冷たいものを取りすぎてしまう。
でも実際は下半身が冷え、血流が滞ってむくみにつながってしまうんです。
■「足元は絶対に冷やさない」ルール
妊娠中のむくみ・冷え対策で大事なのは、とにかく「足元を冷やさないこと」。
靴下を履く、レッグウォーマーを使う、クーラーの風を直接足に当てない…
これだけでだいぶ違います。
「夏に靴下は暑い!」という気持ちもわかります(笑)
でも、足首を冷やすのとお腹を冷やすのは赤ちゃんにとっても大きな影響があるので、ぜひ習慣にしてみてください。
■お灸が妊婦さんに効く理由
ここで僕の専門分野である「お灸」の話を。
「お灸って妊娠中でもしていいの?」とよく聞かれますが、結論から言うとむしろおすすめです。
効果はこんな感じ
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子宮の血流を良くする
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ホルモンバランスを整える
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冷えやむくみを改善する
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つわりを軽減する
さらに、子宮の血流が良くなると赤ちゃんに栄養が届きやすくなるんです。
その結果、赤ちゃんの発育がスムーズになり、精神的にも安定しやすいとされています。
■「良い陣痛」を迎えるために
お灸の効果は妊娠中だけでなく、出産のときにも役立ちます。
温めることで子宮の収縮がスムーズになり、いわゆる「良い陣痛」がつきやすくなるんです。
分娩がスムーズに進むことで、ママの負担も軽くなるし、赤ちゃんも元気に生まれてきやすい。
なので、僕は 妊娠36週を過ぎたら毎日のお灸をおすすめ しています。
もちろん「毎日お灸なんて無理!」という方もいますので、そういう場合は簡単なセルフ灸から始めてもOKです。
■まとめ(前半)
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妊娠初期のつわりは「肝の解毒反応」とも考えられる
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酸味のある食べ物はつわり対策に効果的
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むくみの原因は「冷え」も大きい
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足元は絶対に冷やさないこと!
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お灸は血流改善・ホルモン調整・陣痛促進に効果あり
妊娠中の不安やつらい症状に鍼灸師ができること
さて、前半では「つわり」「むくみ」「冷え」など妊娠初期から中期にかけての代表的な症状についてお話ししました。
ここからは、妊娠後期に特に多い症状や、自宅でできるセルフケア、実際に僕が臨床で妊婦さんにアドバイスしていることを中心にお伝えしていきます。
■妊娠中の腰痛・肩こり
妊娠後期に入ると、お腹がぐんぐん大きくなってきますよね。
すると重心が前に移動するので、腰や背中の筋肉に大きな負担がかかります。
「腰が反りすぎて痛い」
「肩が凝って頭痛がする」
こんな悩みを抱える妊婦さんは本当に多いです。
原因は?
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お腹が大きくなり姿勢が崩れる
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体重増加による負担
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運動不足
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ホルモンの影響で関節や靭帯が緩む
特にリラキシンというホルモンが分泌されると、骨盤周りの靭帯がゆるみます。
これは出産に備えた自然な変化なんですが、安定性が落ちるため腰痛が悪化しやすいんです。
■腰痛・肩こり対策のセルフケア
ここでおすすめしたいのが「タオル枕」です。
バスタオルをくるくる巻いて、腰の後ろや背中に入れるだけ。
椅子に座るときや寝転がるときに使うと、腰への負担がかなり軽くなります。
肩こりには「肩甲骨まわし」が効果的。
両肩を大きく前回し・後ろ回しするだけで、肩周りの血流が改善してスッキリします。
■妊娠中の不眠
「夜なかなか眠れない」
「寝返りをうつとお腹が苦しい」
妊娠後期に多いのが不眠の悩みです。
不眠の原因は大きく2つ。
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身体的なもの(お腹が大きくて苦しい、腰が痛い)
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精神的なもの(出産への不安、ホルモンバランスの乱れ)
対策
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抱き枕を使って横向きに寝る(シムス体位がおすすめ)
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就寝前に足湯やお灸で体を温める
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アロマやハーブティーでリラックスする
特にお灸は副交感神経を優位にしてくれるので、自然に眠りにつきやすくなります。
■妊婦さんにおすすめのお灸ポイント
ここからは実際に僕がよく使うツボを紹介します。
(セルフでやる場合は、必ず火傷に注意して、熱さは「心地よい」程度にしてくださいね)

① 三陰交(さんいんこう)
内くるぶしから指4本分上のところにあります。
婦人科系の万能ツボで、冷え・むくみ・不眠・月経痛など幅広く効果があります。
妊婦さんにも非常におすすめ。
② 足三里(あしさんり)
膝の外側、膝のお皿から指4本下。
胃腸を整え、体力をつけるツボです。つわりや胃のムカムカにも効果的。
③ 太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わるところ。
イライラやストレスを和らげるツボです。
■妊娠後期の「逆子」対策
実はお灸が大活躍するのが「逆子」のときです。
逆子を戻すツボとして有名なのが「至陰(しいん)」というツボ。
足の小指の爪の外側にあります。
ここにお灸をすることで子宮の血流が良くなり、赤ちゃんが自然に回転しやすくなるんです。
もちろん全てのケースで戻るわけではないですが、臨床上かなりの確率で改善が見られます。
■妊娠中のメンタルケア
忘れてはいけないのが、妊婦さんの「心のケア」です。
妊娠中はホルモンバランスの変化で感情の起伏が大きくなります。
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急に涙が出る
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イライラする
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不安が止まらない
こんな気持ちになるのは自然なことです。
「私っておかしいのかな」と思わず、むしろ「そういう時期なんだ」と受け入れてほしいんです。
お灸の心地よい温かさは、自律神経を整えてメンタルにも良い影響を与えます。
「心も体もほぐれる」…これがお灸の大きな魅力だと僕は思っています。
■36週以降は「出産準備のお灸」を!
最後にもう一度強調しておきたいのが、妊娠36週を過ぎてからのお灸です。
この時期にお灸を習慣にすると、血流が良くなり、スムーズな陣痛につながりやすいです。
「良い陣痛」がつけば、お産の時間も短くなり、母子ともに安全に出産しやすくなります。
妊婦さんにとっても、赤ちゃんにとっても大きなメリットがあります。
■まとめ(後半)
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妊娠後期は腰痛・肩こり・不眠が増える
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タオル枕や肩甲骨まわし、抱き枕でセルフケア
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三陰交・足三里・太衝などのお灸ポイントは超おすすめ
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逆子には「至陰」のお灸が有効
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メンタルの不安定さも自然なこと。お灸で心もリラックス
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36週以降は「出産準備のお灸」でスムーズな分娩を目指す
妊娠中の体の変化は、喜びと不安が入り混じったものです。
少しでも快適に、安心してマタニティライフを送っていただけるよう、鍼灸が力になれれば嬉しいです。
「つらいな」「どうしたらいいんだろう」と思ったときは、ぜひ遠慮なくご相談くださいね。
それではまた次回のブログで!

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