坐骨神経痛


1. 坐骨神経痛とは何か

「お尻から足にかけてズキズキと痛む」「長時間座っていると足がしびれる」「歩いていると太ももの裏側が痛くなってくる」——こういった症状に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。それはもしかすると、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)かもしれません。

坐骨神経痛とは、腰からお尻・太もも・ふくらはぎ・足先にかけて伸びる「坐骨神経(ざこつしんけい)」が何らかの原因で刺激を受け、その神経の通り道に沿って痛みやしびれが起こる状態のことです。坐骨神経は人体の中で最も太く、最も長い神経で、その長さは約1メートルにも及びます。

坐骨神経痛は病名ではなく「症状の名前」です。つまり、坐骨神経が刺激される原因となる病気が別にあり、その結果として坐骨神経痛が起こります。原因となる病気の代表的なものとしては、腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)・腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)・梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)などがあります。

日本では推定で約1000万人以上が坐骨神経痛に悩んでいるとされており、腰痛と並んで非常に多い症状の一つです。40代以降に多く見られますが、若い世代でも発症することがあります。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sciatica/symptoms-causes/syc-20377435


2. なぜ起こるのか(原因)

坐骨神経痛が起こる原因は一つではありません。坐骨神経が刺激・圧迫される原因となる病気や状態を一つずつ見ていきましょう。

① 腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ) 背骨の骨と骨の間にあるクッション「椎間板(ついかんばん)」の中身(髄核:ずいかく)が外に飛び出し、坐骨神経を圧迫(あっぱく:押しつけること)した状態です。坐骨神経痛の原因として最も多く、20代〜40代に多く見られます。重いものを持つ・急な動作・長時間の前かがみ姿勢などがきっかけになることがあります。

② 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう) 背骨の中には「脊柱管(せきちゅうかん)」という神経の通り道があります。加齢(かれい)によって骨や靭帯(じんたい)が変形・肥厚(ひこう:厚くなること)し、この通り道が狭くなって神経が圧迫される状態です。50代以降に多く、「少し歩くと足が痛くなり、休むと楽になる」という間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的な症状です。

③ 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん) お尻の深いところにある「梨状筋(りじょうきん)」という筋肉が硬くなったり炎症を起こしたりして、その下を通る坐骨神経を圧迫する状態です。長時間の座り仕事・デスクワーク・車の運転が多い方に起こりやすいとされています。

④ その他の原因 腰椎すべり症(ようついすべりしょう:背骨の骨がずれた状態)・変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう:腰の骨が変形した状態)・腫瘍(しゅよう)・感染症なども坐骨神経痛を引き起こすことがあります。

出典:https://www.clevelandclinic.org/health/diseases/12792-sciatica


3. どんな症状が出るのか

坐骨神経痛の症状は「腰だけが痛い」というよりも、腰からお尻・足にかけての広い範囲に出るのが特徴です。

① お尻から足にかけての痛み・しびれ 最も典型的な症状です。腰・お尻・太ももの裏・ふくらはぎ・足先にかけて、電気が走るような鋭い痛みやじんじんとしたしびれが出ます。多くの場合、左右どちらか一方の足に症状が出ます。

② 特定の動作で悪化する 長時間座り続ける・前かがみになる・くしゃみや咳をする・重いものを持つといった動作で痛みが強まります。逆に横になって安静にしていると楽になることが多いです。

③ 歩行困難(ほこうこんなん) 痛みやしびれが強い場合、長時間歩き続けることが困難になります。特に腰部脊柱管狭窄症では「少し歩くと足が痛くなり、前かがみになって休むと楽になる」というパターンが特徴的です。

④ 足の力が入りにくい 神経の圧迫が強い場合、足に力が入りにくくなる「筋力低下(きんりょくていか)」が起こることがあります。つまずきやすくなる・階段の上り下りが辛くなるといった症状が出ます。

⑤ 排尿・排便の異常 まれに膀胱(ぼうこう)や腸の神経も影響を受け、尿が出にくい・尿漏れ・便秘などの症状が出ることがあります。この症状が出た場合は緊急で医療機関を受診する必要があります。

出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/sciatica


4. 体の中で何が起きているのか(分解して詳しく)

坐骨神経痛が起きているとき、体の内部では何が起きているのかをステップごとに見ていきましょう。

ステップ①:坐骨神経が圧迫・刺激される

椎間板の飛び出し・骨の変形・筋肉の緊張(きんちょう)など、何らかの原因で坐骨神経が圧迫されたり、引き伸ばされたりします。坐骨神経は腰から足先まで伸びる長い神経ですので、圧迫される場所によって症状が出る部位が変わります。

ステップ②:神経に炎症が起きる

圧迫された神経の周囲に炎症が起き、神経が過敏(かびん:刺激に対して敏感になりすぎること)になります。本来なら感じないような軽い刺激でも強い痛みやしびれとして感じてしまう状態になります。

ステップ③:痛みの信号が脳に送られ続ける

神経が圧迫・炎症を起こしている間、痛みの信号が脳に送られ続けます。これが「常にじんじんする」「何もしていないのに痛い」という状態の正体です。

ステップ④:筋肉が緊張・萎縮する

痛みをかばうために周囲の筋肉が緊張し、血流(けつりゅう)が悪くなります。血流が悪くなると神経への栄養供給が減り、症状がさらに悪化するという悪循環(あくじゅんかん)が生まれます。長期間放置すると筋肉が萎縮(いしゅく:細くなること)することもあります。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sciatica/symptoms-causes/syc-20377435


5. 治療方法

腰痛や坐骨神経痛は当院の非常に得意とするところです。詳しくはこちらをご覧ください。

手技療法・物理療法 整骨院では手技(しゅぎ:手を使った施術)による筋肉・関節へのアプローチや、超音波治療・低周波治療・温熱療法(おんねつりょうほう:温めることで血流を改善する治療)などが行われます。神経への圧迫を和らげ、周囲の筋肉の緊張をほぐすことで症状の緩和を目指します。

出典:https://www.clevelandclinic.org/health/diseases/12792-sciatica

ストレッチ・運動療法 坐骨神経を圧迫している筋肉をほぐすストレッチが効果的です。特に「梨状筋ストレッチ(お尻の深い筋肉を伸ばすストレッチ)」や「ハムストリングスストレッチ(太ももの裏を伸ばすストレッチ)」は坐骨神経への圧迫を和らげる効果があります。また体幹(たいかん:胴体の深い部分の筋肉)を鍛えることで腰への負担を減らし、再発を防ぐことができます。

出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/sciatica


6. 日常生活での工夫

坐骨神経痛があると、日常生活のさまざまな場面で工夫が必要になります。

座るとき 長時間同じ姿勢で座り続けることは坐骨神経への圧迫を増やします。30分に一度は立ち上がり、軽く体を動かしましょう。椅子は深く腰かけ、背もたれをしっかり使うことが大切です。硬すぎる椅子は避け、クッションを使うことも効果的です。

寝るとき 横向きに寝て膝の間にクッションを挟む姿勢が、坐骨神経への圧迫を最も減らせる姿勢の一つです。仰向けの場合は膝の下にクッションを置いて膝を少し曲げた状態にすると楽になります。うつ伏せは腰への負担が大きいため避けましょう。

立ち仕事をするとき 長時間立ち続けるときは、片足を少し高い台の上に乗せると腰への負担が減ります。足元に疲労軽減マットを敷くことも効果的です。

重いものを持つとき 膝を曲げてしゃがみ、荷物を体に近づけてから持ち上げることが基本です。膝を伸ばしたまま前かがみで重いものを持つ動作は、椎間板への圧力を急激に高め、症状を悪化させます。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507908/


7. どれくらいで治るのか

坐骨神経痛の回復期間は原因となる病気や症状の重さによって大きく異なります。

軽症で早期に対処できた場合は、数週間〜2〜3ヶ月で改善することがあります。研究によると、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の約80〜90%は、6週間〜3ヶ月の保存的治療で改善するとされています。

一方、腰部脊柱管狭窄症など加齢による変化が原因の場合は、完全な回復よりも「症状をうまくコントロールしながら生活の質を維持する」ことが目標になることもあります。

「自然に治るだろう」と放置して慢性化させることが最も避けるべき状態です。慢性化すると治療に時間がかかるだけでなく、神経のダメージが蓄積される可能性があります。早めに専門家に相談することが大切です。

出典:https://www.clevelandclinic.org/health/diseases/12792-sciatica


8. 見逃してはいけないサイン

坐骨神経痛の症状の中に、緊急で医療機関を受診すべきサインがあります。以下の症状が出た場合は迷わず受診してください。

排尿・排便の障害 尿が出にくい・尿漏れ・便秘・肛門周囲のしびれが出た場合は「馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)」という深刻な状態のサインである可能性があります。これは緊急手術が必要になることがあります。

急激な筋力低下 足に急に力が入らなくなった・足が上がらなくなったという場合は神経へのダメージが進んでいるサインです。

発熱を伴う腰・足の痛み 感染症による脊椎炎(せきついえん)の可能性があり、早急な治療が必要です。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sciatica/symptoms-causes/syc-20377435


9. 再発を防ぐために

坐骨神経痛は再発しやすい症状です。以下の習慣を日常に取り入れることで再発リスクを下げることができます。

体幹の筋肉を鍛えることが最も効果的な予防策です。腰を支える筋肉が強くなると、椎間板や神経への負荷が減ります。正しい姿勢を意識すること・長時間同じ姿勢を続けないこと・体重管理をすること・禁煙(きんえん:たばこをやめること。喫煙は椎間板の劣化を早めることが研究で示されています)も重要です。

出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/sciatica


10. まとめ

坐骨神経痛は、腰からお尻・足先にかけて伸びる坐骨神経が何らかの原因で刺激を受け、痛みやしびれが起こる状態です。原因となる病気はさまざまですが、多くの場合は保存的治療で改善します。

「お尻や足がしびれる」「歩くと足が痛くなる」「長時間座っていると辛い」といった症状を感じたら、早めにご相談ください。排尿・排便の障害や急激な筋力低下が伴う場合は緊急受診が必要です。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507908/

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