1か月前から徐々に強くなった、左側の首の痛み
こんにちは、井手です!
今回ご紹介するのは、デスクワークをされている44歳の女性です。
主な症状は、左側の首の痛みでした。
何かをぶつけたとか、急に首をひねったとか、そういうはっきりしたきっかけはありません。
1か月ほど前から少しずつ痛みが出始め、日がたつにつれて、だんだん強くなってきたそうです。
首を後ろへ反らすと、左側の痛みが強くなる。
特につらいのは朝でした。
「起きた直後が一番しんどくて、首を動かすのが怖いんです」と話されていました。
しばらく起きて過ごしていると、朝よりは少しましになります。
ただ、痛みが完全になくなるわけではなく、一日中ずっと左首に引っかかるような感覚が残っていました。
寝起きがつらくても、動いているうちに少しましになると、「寝違えかな」「もう少し待ったら治るかな」と思っちゃいますよね。
でも今回は、すでに1か月ほど続いています。
そこで、痛い場所だけをすぐに触るのではなく、普段の仕事や生活について詳しく聞きました。
首の痛みは、姿勢不良や筋肉の緊張などでも起こりますが、関節や神経などが関係することもあります。
首の動きだけでなく、しびれ、筋力低下、強い頭痛、発熱などがないかを確認することも大切です。
今回は、腕の強いしびれや力の入りにくさなどは確認されませんでした。
そのうえで首を動かしてもらうと、特に後ろへ反らしたときに、左頸部の痛みが強くなる状態でした。
首の痛みが数週間続く場合や、日常生活に支障が出ている場合には、症状の経過や身体の状態を詳しく確認する必要があります。
出典:Mayo Clinic「Neck pain:Symptoms and causes」
パソコンを見る姿勢と、4歳のお子さんの抱っこが重なっていました
お仕事について聞くと、一日の多くをパソコンの前で過ごすデスクワークでした。
さらに最近は、視力が少し低下している感覚もあったそうです。
画面の文字が見えにくいと、無意識に顔をパソコンへ近づけてしまいます。
最初は少し顔を近づけるだけでも、その姿勢が何時間も続くと、頭が身体より前へ出た状態になってしまいます。
頭って、意外と重たいんですよ。
その頭が前へ出た状態を首や肩の筋肉で支え続けると、そら疲れてきます。
実際に座った姿勢を確認すると、パソコンを見るような姿勢になったとき、顔が前へ出て、肩も少し内側へ入っていました。
「仕事に集中したら、こんな姿勢になってると思います」
ご本人も、自分の姿勢を見て少し驚かれていました。
姿勢って、普段は自分で見えないじゃないですか。
本人はまっすぐ座っているつもりでも、気づけば顔だけ前へ出ていることはめっちゃ多いです。
さらに、ご自宅では4歳のお子さんを抱っこする機会が多いとのことでした。
4歳になると、赤ちゃんの頃より身体も大きくなっています。
それでも「抱っこして」と言われたら、してあげたくなりますよね。
抱っこするときは、毎回左右均等に抱えるとは限りません。
抱きやすい側へ身体を傾けたり、片方の腕や肩ばかりを使ったりします。
デスクワーク中は、頭が前へ出た姿勢で首の筋肉へ負担がかかる。
仕事が終わったあとも、抱っこで首や肩、胸まわりへ負担が加わる。
今回の症状は、一つの大きな原因というより、こうした毎日の小さな負担が積み重なって出てきた可能性があると考えました。
パソコンへ顔を近づけたり、長時間同じ姿勢を続けたりすると、首や肩の筋肉へ負担がかかりやすくなります。
デスクワークでは、椅子や画面の位置だけでなく、途中で姿勢を変えることも大切です。
出典:Johns Hopkins Medicine「Addressing Neck and Back Pain When You’re Working from Home」
1回目は頸肩部、2回目は首の前側と胸部まで確認しました
初回は、痛みが出ている左頸部と、その周囲の肩まわりを中心に状態を確認しました。
触れてみると、左側の首から肩にかけて筋肉の緊張が強く、首を動かすときにも動きの硬さがありました。
そこで1回目は、頸部と肩まわりを中心に施術を行いました。
施術後に首を動かしてもらうと、来院時より動かしやすくなり、痛みも軽くなりました。
ただ、完全に痛みがなくなったわけではありません。
「最初より楽です。でも、後ろへ反らすとまだ少し痛いです」とのことでした。
ここで同じ場所だけを、もう一度強く施術すればいいとは考えませんでした。
多少改善しても症状が残っているということは、首の後ろ側や肩だけでは、まだ見られていない部分があるかもしれません。
そこで2回目は、改めて姿勢と首の動きを確認しました。
すると、顔が前へ出て肩が内側へ入った姿勢では、首の後ろだけでなく、首の前側や胸部にも強い緊張が出ていました。
胸の筋肉が硬くなり、肩が前へ引っ張られる。
その状態で顔を正面へ向けようとすると、首の後ろ側はずっと頑張らなければいけません。
なので2回目は、左頸部だけに焦点を当てるのではなく、首の前側と胸部まで施術範囲を広げました。
痛い場所から少し離れたところを触るので、「そこも関係あるんですか?」と思いますよね。
でも、姿勢が崩れている場合、身体の前側と後ろ側はセットで考える必要があります。
後ろ側だけを緩めても、胸や首の前側が身体を前へ引っ張ったままなら、また同じ負担がかかりやすいからです。
首の痛みに対する身体評価では、症状の出る動作や姿勢、筋力、関節の動きなどを確認し、その状態に合った施術や運動を考えることが大切です。
姿勢の改善や筋力強化は、首をより良い位置で支えるためにも役立ちます。
3回目の来院時には、痛みがほぼなくなっていました
3回目に来院されたとき、まず最初に2回目の施術後の状態を聞きました。
すると、ご本人から「かなり良くなりました。痛いというより、少し違和感があるくらいです」と言っていただきました。
最初は、首を後ろへ反らすだけでも左側に痛みが出ていました。
朝起きたときもつらく、一日を通してずっと痛みが残っていた状態です。
それが、2回目の施術後には痛みがほとんどなくなり、気になるのはわずかな違和感だけになっていました。
これは、首の後ろ側や肩だけではなく、前頸部や胸部まで確認して施術したことが合っていた可能性が高いと考えました。
やっぱり、痛いところだけをずっと触ればいいわけではないんですよね。
身体の前側が縮こまり、肩が前へ引っ張られていたら、首の後ろ側はずっと支え続けなければいけません。
後ろだけを緩めても、前側の緊張が残っていれば、また同じ負担がかかってしまいます。
そこで3回目も、前回の反応をもとに、頸部、肩、前頸部、胸部の状態を確認しながら施術を行いました。
痛みがほとんどなくなっているからといって、いきなり強い刺激を加える必要はありません。
むしろ、良くなってきたときほど、どこにまだ緊張が残っているのかを細かく見ながら、刺激量を調整することが大切です。
施術後に首を後ろへ反らしてもらうと、以前のような強い痛みはありませんでした。
「これなら仕事中もだいぶ楽です」と笑っていただけました。
こういう言葉を聞けると、こちらもめっちゃホッとします。
ただ、痛みが減ったことと、原因になっていた姿勢や筋力の問題まで完全に変わったことは別です。
仕事でパソコンを使う時間や、お子さんを抱っこする生活はこれからも続きます。
そのため、症状を落ち着かせるだけでなく、同じ負担が繰り返されにくい身体を作ることも必要だと考えました。
首の痛みに対しては、身体の状態に応じて、運動療法や姿勢改善、筋力強化などを組み合わせることがあります。
出典:Cleveland Clinic「Neck Pain」
良い状態を保つには、姿勢を支える筋肉も必要です
今回のように、施術によって痛みが軽くなったとしても、それだけで終わりにすると、また同じ症状を繰り返す可能性があります。
デスクワークで顔が前へ出る。
肩が内側へ入り、胸が縮こまる。
その姿勢を首や肩の筋肉だけで何時間も支える。
さらに仕事が終わったあとには、4歳のお子さんを抱っこする。
これでは、首や肩が休む時間がなかなかありません。
施術で一時的に筋肉がやわらかくなっても、姿勢を支える力が弱いままだと、時間がたつにつれて元の姿勢へ戻りやすくなります。
だからこそ、首や肩まわりだけではなく、背中や肩甲骨まわり、体幹などの筋肉も少しずつ使えるようにする必要があります。
とはいえ、いきなりきつい筋トレをする必要はありません。
むしろ、普段ほとんど運動していない方が、急に頑張りすぎると、別の場所を痛めてしまうことがあります。
最初は、肩甲骨を軽く寄せる。
胸を無理なく開く。
背中を丸めた姿勢から、ゆっくり身体を起こす。
そういう簡単な動きからで十分です。
「運動したほうがいいのは分かるけど、時間がないんです」と言われる方も多いんですよ。
めっちゃ分かります。
仕事もあって、家のこともあって、お子さんのお世話もある。
その中で30分運動してくださいと言われても、なかなか続かないですよね。
なので、一回に長くやるより、仕事の合間に1分だけ身体を動かすほうが現実的です。
パソコン作業の途中で、一度立つ。
肩を後ろへ回す。
遠くを見る。
これだけでも、ずっと同じ姿勢を続けるよりは身体への負担を減らせます。
姿勢を支える筋肉は、特別なトレーニングだけでなく、日常の小さな動きでも少しずつ使うことができます。
出典:Hospital for Special Surgery「Exercises for Neck Pain」
運動は疲れるためだけではなく、疲れにくい身体を作る方法でもあります
「疲れているのに、さらに運動するんですか?」と思う方もいるかもしれません。
これ、めっちゃ自然な疑問です。
仕事や家事でクタクタなのに、そこから運動しようとはなかなか思えませんよね。
ただ、運動は疲労を増やすだけのものではありません。
身体を動かすことで筋肉への血流が増え、筋肉に酸素や栄養が届きやすくなります。
また、適度な運動を続けることで筋力や持久力がつき、同じ仕事や家事をしても疲れにくくなることがあります。
つまり、運動は「疲れること」でもありますが、長い目で見ると「疲れにくい身体を作ること」でもあるんです。
今回の患者さんには、痛みが落ち着いてきた段階で、無理のない範囲から身体を動かすことをお伝えしました。
首を大きくぐるぐる回したり、痛みを我慢して強く伸ばしたりする必要はありません。
まずは軽く歩く。
肩甲骨を動かす。
胸を開く。
仕事中に姿勢を変える。
そのくらいからで大丈夫です。
最初から毎日完璧にやろうとすると、続かなくなっちゃうじゃないですか。
なので、「今日は一回できた」で十分です。
大事なのは、少しでも続けることです。
痛みが出てから施術を受けることも、もちろん大切です。
でも、痛みが出る前に身体を動かし、筋肉を使う習慣を作ることができれば、良い状態を保ちやすくなります。
「運動しないとあかんのは分かってるけど、何をしたらいいか分からない」
「首が痛いから、動かしていいのか不安」
そういう方は、無理に自己流で始めなくても大丈夫です。
今の身体の状態を確認しながら、できる動きから一緒に考えていきましょう。
運動は、痛みや疲労を我慢してやるものではありません。
身体を少しずつ使いやすくし、疲れにくい状態へ近づけるための一つの手段です。





