腰痛は改善していたのに、今回は頭痛や食欲の低下が出ていました
こんにちは、寺下です!
今回ご紹介するのは、以前から往診で身体のケアをさせていただいている80代の女性です。
もともとは腰痛がつらくて施術を始めた方ですが、腰の状態はかなり落ち着いていました。
現在は、その日の体調や生活の様子を聞きながら、気になるところを整える身体のケアへ移行しています。
いつものようにお話を聞くと、今回は少し様子が違いました。
「頭がキリキリするんよ」
そう話され、片頭痛のような頭の痛みを訴えておられました。
さらに、胸のあたりがつかえるような感じがあり、食べられないほどではないものの、いつもより食欲がないとのことでした。
眠りも浅く、夜中に何度か目が覚める。
頭に熱がこもったような感覚があり、首や肩も凝っている。
一つだけではなく、いろいろな不調が同じ時期に重なっていたんです。
こういうとき、「頭が痛いから頭だけ」「肩が凝るから肩だけ」と見てしまいがちじゃないですか。
でも、頭痛、食欲の変化、眠りの浅さ、首肩の緊張が一緒に出ている場合は、身体全体の状態や、その前後に何があったのかまで聞く必要があります。
実際、強いストレスは頭痛、睡眠の問題、筋肉の緊張、胃腸の不調、食欲の変化など、身体のさまざまな反応として現れることがあります。
ただし、頭痛のすべてがストレスによるものとは限りません。
出典:Cleveland Clinic「Women and Stress」
娘さんとの喧嘩をきっかけに、不調が重なっていました
身体の症状について一通り聞いたあと、最近いつもと違う出来事がなかったか、もう少しゆっくりお話を聞きました。
すると、少し黙ったあとに、娘さんと喧嘩をされたことを話してくださいました。
それから、しばらく娘さんと話をしていないとのことでした。
家族との喧嘩って、他人との喧嘩より引きずることがありますよね。
本当は話したい。
でも、自分から声をかけるのも悔しい。
言われたことを思い出すと、また腹が立つ。
そういう気持ちを抱えたまま過ごしていると、夜になっても頭の中が休まらないことがあります。
「そら眠りも浅くなりますよね。気になって仕方なかったんちゃいますか?」
そうお聞きすると、「そうなんよ。ずっと考えてしまうんよ」と話してくださいました。
ここで大切なのは、単に「ストレスですね」で終わらせないことです。
いつから症状が出たのか。
何が一番つらいのか。
食事や睡眠は、普段とどう違うのか。
ご本人の言葉を急がせずに聞いていくことで、症状が出た時期と生活上の出来事が重なっていることが見えてきました。
もちろん、喧嘩をしたから必ず身体に症状が出るわけではありません。
同じ出来事でも、身体の反応は人によって全然違います。
だからこそ、症状だけを聞くのではなく、その方が今どんな気持ちで過ごしているのかまで知ることが大事なんです。
出典:Cleveland Clinic「Signs of Emotional Stress and How To Cope」
みぞおちの張りと不快感を確認し、東洋医学的に施術しました
お話を聞いたうえで、まずお腹の状態を確認しました。
みぞおちのあたりに触れると、周囲が張って硬くなっていました。
強く押したわけではありませんが、少し圧を加えると、「そこは何か嫌な感じがする」と言われました。
一方で、ほかのお腹の場所には、同じような不快感はありませんでした。
胸のつかえ、食欲の低下、眠りの浅さ、頭部の熱感、首肩の緊張。
さらに、娘さんとの喧嘩をきっかけに気持ちが落ち着かない状態が続いていたこと。
これらを合わせて考え、今回は精神的な緊張が身体の不調に関係している可能性を考えました。
東洋医学では、感情の変化や身体の張り、睡眠、食欲、熱感などを一つずつ切り離さず、全体の状態として見ていきます。
今回は、東洋医学でいう「肝」の働きが乱れ、気の巡りが滞っている状態として施術方針を組み立てました。
ここでいう「肝」は、病院で調べる臓器としての肝臓と、まったく同じ意味ではありません。
東洋医学の考え方の中で、感情の変化や身体の巡りなどを整理するために使われる言葉です。
ですので、「肝の治療をした」というのは、肝臓の病気を治療したという意味ではありません。
みぞおち周辺の緊張や首肩の状態、ご本人の体力や反応を確認しながら、刺激量を抑えた鍼灸施術を行いました。
80代の方ですから、たくさん鍼をすればいい、強く刺激すればいいというものではありません。
表情や呼吸、会話の様子を見ながら、身体がびっくりしないように進めました。
施術後、もう一度みぞおちへ軽く触れると、最初にあった硬い張りがやわらぎ、不快感も感じなくなっていました。
頭にこもっていた熱っぽさも落ち着き、「さっきより頭がすっきりする」と話してくださいました。
ただし、今回の変化だけで、すべての症状の原因がストレスだったと断定することはできません。
症状が続く、悪化する、普段と違う強い頭痛や胸部症状が出る場合には、医療機関での確認が必要です。
次の往診では「久しぶりによく眠れた」と話してくださいました
次の往診でお会いしたとき、まず頭痛や食欲、睡眠の状態について確認しました。
すると、患者さんが穏やかな表情で、「あの日は久しぶりによく眠れたんよ」と話してくださいました。
キリキリしていた頭痛も治まり、首や肩の凝りも前よりずいぶん楽になったそうです。
頭に熱がこもるような感覚もなく、みぞおちの不快感も気にならなくなっていました。
こういうお話を聞けると、私もほんまにホッとします。
ただし、施術後に症状が軽くなったからといって、「今回の頭痛や食欲低下は、すべてストレスが原因でした」と断定することはできません。
頭痛にはさまざまな種類があり、睡眠不足、食事の変化、筋肉の緊張、薬の影響、病気など、いろいろな原因が考えられるからです。
今回の方については、娘さんとの喧嘩があった時期と、頭痛、眠りの浅さ、食欲の低下などが出始めた時期が重なっていました。
さらに、ゆっくりお話を聞いて、みぞおちや首肩の状態まで確認したうえで施術し、その後に症状が落ち着いたという経過がありました。
そのため、精神的な緊張が身体の不調を強めていた可能性はあったと考えています。
人間って、気持ちと身体をきれいに分けることはできないんですよね。
嫌なことがあった日は、布団に入っても同じ会話を何回も思い出してしまうじゃないですか。
眠りが浅くなると、翌日は身体がだるくなり、首や肩にも力が入りやすくなります。
食欲まで落ちると、さらに元気が出にくくなってしまいます。
一つひとつは別の症状に見えても、同じ時期に重なっている場合には、身体だけでなく生活上の出来事も含めて確認することが大切です。
出典:Mayo Clinic「Stress symptoms: Effects on your body and behavior」
東洋医学の施術では、身体の状態だけでなくお話を聞くことも大切です
東洋医学の施術では、痛い場所だけを確認して、すぐに鍼をするわけではありません。
いつから不調が出たのか。
食事は取れているのか。
眠れているのか。
便通や身体の冷え、熱っぽさに変化はないか。
最近、心に引っかかっている出来事はなかったか。
そうしたことを一つずつ聞きながら、その方の身体全体を見ていきます。
今回も、最初に「頭が痛い」とだけ聞いていたら、頭や首肩への施術だけで終わっていたかもしれません。
でも、食欲が落ちていることや、眠りが浅いことまで聞き、さらに娘さんとの喧嘩について話してくださったことで、身体の見方が変わりました。
患者さんも、最初から家族との喧嘩を話そうと思っていたわけではなかったと思います。
身体のことをいろいろ聞いていく中で、「実はな……」と話してくださったんです。
こういう話って、言いにくいじゃないですか。
「施術に関係ない話かもしれない」と思って、患者さんが遠慮してしまうこともあります。
でも、こちらからすると、その何気ないお話が大切な手がかりになることがあります。
だから私は、施術を急ぐより、まずはしっかりお話を聞くことを大事にしています。
もちろん、話したくないことを無理に聞き出すことはしません。
話せる範囲で大丈夫です。
ただ、「最近こんなことがあってから調子が悪い気がする」と思うことがあれば、身体と関係がないと決めつけずに教えてください。
身体を触って分かることもありますが、お話を聞かなければ分からないことも、ほんまにたくさんあるんです。
出典:Cleveland Clinic「Stress: What It Is, Symptoms, Management & Prevention」
痛い場所だけが原因とは限りません。まずは何でも相談してください
身体に痛みが出ると、どうしても「痛いところが悪い」と思ってしまいますよね。
頭が痛ければ頭。
肩が凝れば肩。
胃のあたりが気持ち悪ければ、お腹だけが悪い。
もちろん、痛みや不快感が出ている場所を確認することは大切です。
ただ、今回のように、気持ちの緊張や眠りの浅さ、食欲の変化などが重なり、離れた場所にいろいろな症状が出ることもあります。
身体って、そんなに単純ではないんですよ。
だからこそ、「肩凝りだから肩だけ揉んでほしい」と最初から施術する場所を決めるのではなく、まず症状の経過や生活の変化を聞かせていただきたいと思っています。
今回の患者さんも、腰痛の往診から始まりました。
腰痛が落ち着いたあとも、その都度身体の状態を確認していたからこそ、いつもと違う変化に気づくことができました。
「こんな話までしていいのかな」
「家族と喧嘩したことなんて、施術には関係ないよね」
そう思う必要はありません。
最近眠れていない。
食欲がいつもと違う。
何となく胸がつかえる。
頭が重い。
家族のことが気になって、ずっと考えてしまう。
そうしたことも含めて、まずはお話しください。
ただし、頭痛や胸部の不快感については、すべてをストレスや筋肉の問題として扱ってよいわけではありません。
突然経験したことのない強い頭痛が出た、言葉が出にくい、手足に力が入らない、意識がぼんやりする、激しい胸痛や息苦しさがあるといった場合には、鍼灸や整骨院より先に医療機関への受診が必要です。
また、いつもの頭痛であっても、症状が変化した場合や、対処しても改善しない場合には医療機関へ相談することが勧められています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
施術をすることだけが、私たちの役割ではありません。
今ここで施術してよい状態なのか、それとも病院で詳しく調べてもらう必要があるのかを考えることも大切です。
身体の不調は、我慢しているうちに生活全体をしんどくさせてしまうことがあります。
どんな小さなことでも構いません。
一人で「気のせいやろ」と抱え込まず、まずは相談してくださいね。





