更年期障害
きっかけは妻の一言だった
こんにちは、矢吹です。
今回のテーマは更年期障害です。
このテーマを書こうと思ったきっかけは、妻のひと言でした。「更年期障害ってよく聞くけど、結局なんなの?」と聞かれたとき、改めてちゃんと説明しようとして、自分でも深く調べ直しました。
調べれば調べるほど、これは女性だけの話ではないこと、そして多くの人が「仕方ない」と我慢しながら過ごしていることがわかりました。施術者として、もっとちゃんと伝えなければいけないテーマだと感じています。
更年期障害は、人生の大きな転換期に誰にでも起こりうる「体の嵐」のようなものです。嵐は必ず過ぎ去ります。ただし、何も対処せずにただ耐えるのと、しっかり備えて乗り越えるのとでは、体へのダメージがまったく違います。今回はそのことをお伝えしたいと思います。

そもそも更年期障害はなぜ起きるのか
一言で言うと、ホルモンの急激な減少による自律神経の混乱です。
女性の場合、閉経前後の45歳から55歳頃にかけて、卵巣の機能が低下することで女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に減少します。このとき脳はホルモンをもっと分泌するよう卵巣に指令を出し続けますが、卵巣はその指令に応えられない状態が続きます。この「指令を出しても応答がない」という混乱が、自律神経全体に波及していきます。
自律神経は体温・血圧・心拍・発汗・消化など、体のあらゆる機能をコントロールしている神経です。ここが乱れると、体中のさまざまな場所で不具合が起きます。
その代表的な症状がホットフラッシュです。突然顔や上半身がカッと熱くなり、大量の汗が出る。これは血管のコントロールが乱れることで起きる症状で、世界中の女性の約8割が経験すると言われています。「なんで急に汗が」「顔が赤くなって恥ずかしい」という経験をされている方は多いと思います。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/menopause/symptoms-causes/syc-20353397
男性にも更年期がある
「更年期は女性のもの」というイメージが強いですが、男性にも更年期があります。男性更年期障害、医学的にはLOH症候群と呼ばれています。
男性は40代以降、テストステロンという男性ホルモンが徐々に低下していきます。女性のように急激なホルモンの低下ではなく、緩やかに下がっていくため、本人も気づきにくいのが特徴です。
男性更年期で特徴的なのは、体よりも先にメンタル面に症状が出やすいことです。「以前は仕事にやる気があったのに、最近何もしたくない」「理由もなく気力が湧かない」「自分に自信が持てなくなった」——こういった変化が、実はホルモンの低下によるものであることが少なくありません。
さらに「疲れやすくなった」「筋力が落ちた気がする」「夜中に目が覚める」「集中力が続かない」といった症状も男性更年期の典型的なサインです。「年のせいだから仕方ない」と片付けてしまいがちですが、適切なケアで改善できることが多いです。
40代前後の男性で、なんとなく不調が続いているという方は、一度この視点で自分の体を振り返ってみてください。

出典:https://www.clevelandclinic.org/health/diseases/15603-male-hypogonadism-low-testosterone
「みんな通る道だから」と我慢するのが一番危険
更年期障害で最も怖いのは、症状そのものよりも「我慢して放置すること」です。
多くの方が「更年期なんてみんな通る道だから」「そのうち終わるから」と思って、何年も我慢し続けます。しかし放置して重症化すると、日常生活に支障が出るほど深刻な状態になることがあります。
メンタル面への影響は特に深刻です。強い不安感・不眠・気力の低下が続くと、やがてうつ状態やパニック発作につながるケースもあります。「気の持ちようでなんとかなる」と思っていたものが、実はホルモンバランスの乱れによる神経系の問題であることを理解することが大切です。
身体面では、慢性的な疲労感・骨密度の低下・心疾患リスクの上昇といった問題が長期的に起きてきます。特に女性はエストロゲンが骨を守る役割を持っているため、閉経後に骨粗鬆症のリスクが急上昇します。
さらに、仕事・育児・介護などのストレスが重なっている状況では症状が悪化しやすいです。更年期の時期は、ちょうど仕事の責任が重くなる年代・親の介護が始まる年代と重なることが多く、体への負荷が二重三重になりやすいのです。
「つらいけど仕方ない」ではなく、早めに対処することが体を守ることにつながります。

出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/menopause/managing-menopause-symptoms
なぜ鍼灸施術が更年期障害に効くのか
鍼灸は、ホルモンバランスの乱れや自律神経の乱れを整えることがとても得意です。これは経験則だけでなく、科学的な研究によっても裏付けられています。
鍼の刺激は、脳の視床下部に伝わります。視床下部は自律神経とホルモン分泌の両方をコントロールしている司令塔のような場所です。ここに働きかけることで、乱れた自律神経のバランスを整え、ホルモン系の調整を助けることができます。
また鍼の刺激によって、脳内からエンドルフィンをはじめとするリラックス成分が分泌されます。エンドルフィンはストレスホルモンであるコルチゾールを抑制する働きがあり、慢性的なストレス状態を緩和する効果があります。
具体的な効果として、ホットフラッシュの頻度と強さの軽減・睡眠の質の向上・不安感の軽減・慢性的な疲労感の改善などが報告されています。2025年の最新データでも、鍼灸施術による睡眠の質の向上が改めて示されています。
更年期障害の症状は人によって異なります。ほてりが強い方・眠れない方・気力が出ない方・体がだるい方。当院では毎回の問診でその日の状態を確認し、症状に合わせてオーダーメイドの施術を行っています。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/menopause/symptoms-causes/syc-20353397
東洋医学から見た更年期|ツボで整える体のバランス
東洋医学では、更年期を「腎」の衰えととらえます。
東洋医学における腎とは、解剖学的な腎臓だけを指すのではなく、生命エネルギーの源・成長・生殖・老化に関わるすべての機能を包括した概念です。更年期はこの腎のエネルギーが低下することで、体全体のバランスが崩れると考えます。
具体的なツボを使った施術の例をいくつかご紹介します。
ほてりやのぼせが強い方には、足首の内側にある太谿というツボを使います。腎のエネルギーを補い、上に昇りすぎた熱を下に引き下ろす効果があります。眠れない・不安感が強い方には、手首の内側にある神門と頭頂部の百会を組み合わせます。神門は心を落ち着かせる代表的なツボで、百会は自律神経全体を整える効果があります。疲労感が強い方には、下腹部の気海・関元を温めることで体の根本的なエネルギーを補います。

これらのツボを、その日の症状や体の状態に合わせて組み合わせていくことが、東洋医学的なアプローチの特徴です。画一的な施術ではなく、その人のその日の状態に合わせて変えていく。これが更年期のように日々症状が変化する状態に対して、特に効果を発揮します。
また施術だけでなく、自宅でできる簡単なセルフケアもお伝えしています。毎日少しずつ自分の体に意識を向けることが、症状の安定につながっていきます。
出典:https://www.clevelandclinic.org/health/treatments/22483-acupuncture
更年期は「終わり」ではなく「メンテナンスの時期」
最後に、一番伝えたいことをお話しします。
更年期は決して「終わりの始まり」ではありません。体が次のステージに移行するために、大きなメンテナンスをしている時期です。
車に例えるなら、長く走り続けたエンジンが切り替わるタイミングです。ここでしっかりメンテナンスをすれば、その後も長く快適に走り続けられます。逆にメンテナンスを怠れば、あちこちに不具合が出てきます。
奥様やパートナー、身近な方が「最近なんかつらそうだな」と感じていたら、「更年期だから仕方ない」と流さずに、ぜひ一緒に対処することを考えてほしいと思います。一人で抱え込まずに、周りの人が少し気にかけるだけで、乗り越えやすさがまったく変わります。
当院では、その日の症状に合わせたオーダーメイドの施術と、自宅でできるセルフケアの指導を組み合わせながら、一人ひとりの更年期を一緒に乗り越えるサポートをしています。
「これは更年期なのかな」「最近なんとなく不調が続いている」という方は、気軽にご相談ください。
矢吹でした。
出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/menopause/managing-menopause-symptoms
