長年の肩こりと自律神経の不調を克服した70代女性のケース
こんにちは、矢吹です!
今回は、長年にわたる慢性的な肩こりと、それに伴う自律神経の乱れで悩まれていた70代女性の症例を紹介します。
この方はもともと非常に几帳面で責任感の強い性格で、周囲の方々からも「しっかりしているね」と言われるタイプ。
しかしその反面、常に頭の中で何かを考えているような状態で、心も体もリラックスする時間が少なかったそうです。
長年の肩こりがつらく、頭痛や寝不足、胃の不快感など、全身の不調につながっていました。
ご本人は「もう年だからしょうがない」と諦めかけていたようですが、
“どこに行っても良くならないから、根本的に体を整えたい”
という強い思いで当院に来られました。
初診時の状態
主訴は「肩こり・頭痛」。
しかし問診を進めると、
-
胃もたれや消化不良などの 胃腸の不調
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夜中に何度も目が覚める 不眠
-
季節を問わず感じる 手足の冷え
といった、明らかに自律神経系のバランスが乱れているサインが見られました。
私がこのようなケースでいつも注目するのは、
「肩こりや頭痛が本当に“肩”だけの問題なのか？」 という点です。
実際、肩こりは筋肉の緊張だけでなく、
自律神経の乱れによる血流低下、ストレス、内臓の不調など、
複数の要因が絡み合って生じます。
この患者様の場合、明らかに「交感神経が優位になりすぎている状態」でした。
つまり、体が常に“緊張モード”のままリラックスできない。
その結果、筋肉の緊張も緩まず、血流が滞り、慢性的なこりと痛みを引き起こしていました。
施術方針と初期アプローチ
施術方針としては、
① 筋肉の過緊張を和らげる
② 自律神経のバランスを整える
③ 内臓（特に胃腸）の機能をサポートする
この3つを柱に進めていきました。
初期の施術は、首・肩・背中を中心とした 鍼灸施術。
頸部から肩背部、腕や足のツボにもアプローチしました。
さらに、手技療法で首肩まわりの筋膜を丁寧に緩め、
“呼吸がしやすい状態”を作ることを意識しました。
最初の2〜3回の施術で、
「肩が軽くなった」「頭痛がほとんど出なくなった」との感想をいただきました。
鍼灸は筋肉の緊張を緩めるだけでなく、
血流を改善し、脳や内臓への酸素供給を促進する効果があります。
この方のように、筋肉のコリと自律神経の乱れが重なっている場合、
“鍼灸の相性”が非常に良いのです。
睡眠への変化と患者様の笑顔
5回ほどの施術で、
「毎日ではないけれど、朝まで眠れる日が増えた」
と喜びの声をいただきました。
夜中に何度も目が覚めていた方が、
朝までぐっすり眠れるようになる。
この変化は、体だけでなく“心の安心”にもつながります。
睡眠の質が上がると、
-
血圧や脈拍の安定
-
胃腸の働きの改善
-
疲労回復力の向上
といった全身的な良循環が起こります。
まさに、身体が「治るモード」に切り替わる瞬間です。
ストレスへの鍼灸効果
胃腸・冷えへのアプローチ
肩こり・頭痛が改善した後は、
「次は胃の不調や冷えも良くしたい」との希望をいただき、
背中側のツボ（胃兪・脾兪・腎兪など）を中心に鍼灸を行いました。
特にお灸は、冷え性の改善に非常に有効です。
体の深部をじっくり温めることで、血流を促進し、
自律神経をリセットする効果があります。
週1回のペースで3ヶ月ほど施術を続けると、
「胃もたれや消化不良はもう気にならなくなりました」とのこと。
これには私自身も嬉しさを感じました。
後半では、ここからさらに深堀りしていきます。
体温が上昇した理由や、自律神経と免疫の関係、
そしてこの症例が示す「鍼灸の真価」について、
もう少し詳しく解説します。
長年の肩こりと自律神経の不調を克服した70代女性のケース（後半）
さて、ここからはこの患者様の施術経過の中でも、
私自身がとても印象的だった「体温の変化」と「免疫力の向上」についてお話ししたいと思います。
鍼灸で体温が上がる？ その理由とは
この患者様は初診の時点で、平熱が 35.2〜35.4℃。
昔から「自分は冷え性体質」と思い込んでおられました。
しかし、半年ほど週1回のペースで施術を続けるうちに、
なんと 36.4〜36.6℃ に上昇していたのです。
「最近は手足が冷えないし、冬でも靴下を二重にしなくて済むんです」
と笑顔で話してくださった時は、本当に嬉しかったですね。
鍼灸施術をしていると、こうした体温上昇は決して珍しいことではありません。
そのメカニズムを、少しわかりやすく説明してみましょう。
① 自律神経のリズムが整う
鍼灸の最大の特徴は、“体に備わる自律神経の調整機能”を呼び覚ますことです。
自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、
現代人の多くはこのバランスが崩れ、交感神経（緊張モード）が優位になっています。
交感神経が優位だと、
-
末端の血管が収縮して冷える
-
胃腸の働きが低下する
-
呼吸が浅くなる
といった反応が起こりやすくなります。
鍼やお灸による適度な刺激は、
この緊張状態を“解除”し、副交感神経（リラックスモード）を活性化させます。
血管が広がり、血液の流れが良くなることで、
全身に熱が行き渡りやすくなる。
その結果、体温が上がってくるわけです。
② 筋肉の硬さが取れ、代謝が上がる
もうひとつ大きな要因が 筋肉の弾力性の回復 です。
筋肉は血流を促す「ポンプ」のような働きをしています。
筋肉が硬くなればポンプ機能が低下し、
末端まで血液が届かなくなってしまいます。
鍼灸で深層の筋肉が緩むと、
“筋肉が再び動き出す” ような感覚が得られます。
それによって血流が改善され、自然と体温も上昇するのです。
③ 内臓の血流が整うことで基礎代謝が安定
意外に思われるかもしれませんが、
人間の体温の約6割は「内臓」で生み出されています。
とくに肝臓や胃腸、腎臓は代謝の要です。
この方の場合、胃腸の調子が良くなった時期と、
体温の上昇時期がぴったり一致していました。
つまり、鍼灸で自律神経と内臓の働きが整ったことで、
体が「熱をつくる力」を取り戻したと考えられます。
鍼灸と免疫力の関係
面白いデータがあります。
東京有明医療大学の研究で、鍼刺激によって 白血球の増加と免疫細胞の活性化 が確認されたのです。
また、ハーバード大学の動物実験では、
「特定のツボ刺激が副交感神経を介して抗炎症反応を起こす」ことも報告されています。
この方が「風邪をひかなくなった」とおっしゃっていたのも、
こうした自律神経・免疫系の連動作用によるものだと思われます。
つまり、鍼灸は“体のスイッチを入れる治療”。
自然治癒力を最大限に引き出すアプローチなんです。
継続の力と“信頼関係”の大切さ
今回の患者様がここまで改善された大きな要因は、
何よりも 「続けてくださったこと」 です。
週に1回、淡々と。
時には「今日はあまり変化が分からない」と言いながらも、
施術を休むことなく継続してくれました。
この“継続の力”が、身体のリズムを整え、
自律神経の反応を安定させるのです。
鍼灸は即効性もありますが、
本来は「体質を根本から変える治療」。
焦らずコツコツと続けることで、
体がゆっくりと“理想の状態”を思い出していきます。
まとめ：鍼灸の本質は「全体を見る」こと
肩こりを治したいという目的で来院された患者様でしたが、
最終的には睡眠、胃腸、体温、免疫、冷えと、
全身のコンディションが整っていきました。
この症例を通して改めて感じたのは、
鍼灸の魅力は「部分ではなく、全体を見る医療」だということです。
鍼灸師の仕事は、“痛みの根本”を探すこと。
肩がこるのは、肩に原因があるとは限りません。
心の緊張、内臓の疲れ、生活リズムの乱れ——
それらが積み重なって現れる「結果」なのです。
この方が最後に言われた一言がとても印象的でした。
「長年悩んできた肩こりが治って、
それ以上に“体が元気になった”気がします。」
その笑顔が、何よりも嬉しい瞬間でした。
最後に
私自身、鍼灸という仕事を通して常に思うのは、
人の身体には“治る力”が必ず備わっているということ。
それを引き出すお手伝いをするのが、
私たち治療家の使命です。
今、不調で悩んでいる方へ。
もし薬や湿布、マッサージでも良くならない症状があれば、
ぜひ一度「鍼灸」を思い出してください。
静かに、けれど確実に、
あなたの身体は変わり始めるはずです。
自律神経の不調や肩こりでお困りの方は矢吹まで！！
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