野球肘とは

「野球肘」とは野球の投球動作で起こる肘関節の障害です。

野球の投球動作を繰り返すことは同じ部分への負担が大きいため

投球時、または投球後に肘が痛くなったりしますが

症状が重くなると肘の動きが悪くなり上手く動かなくなることもあります。

「野球肘」の名前から一種類しかないかのように思われがちですが

子どもと大人の野球肘では内容が異なり、いろいろな種類があります。

 

 

野球肘の原因

投球動作を繰り返すことによって肘への負担が大きくなることが原因となります。

肘の周辺には上腕骨、橈骨、尺骨などの骨があり、これらを靭帯や筋肉でつないでいますが

投球動作では投げる際にねじれが生じて肘の辺りで骨や軟骨がぶつかりあいます。

また投球動作時はボールを握って力の入った状態のまま

引っ張られるような力が働き肘の筋肉にも負荷がかかってしまいます

その結果、骨が傷んだり剝がれたり、靭帯や腱などの筋肉も炎症を起こして痛みます。

 

特に肩関節が最大外旋した時とボールを離す前後で肘に負荷が大きくかかるため

投げ過ぎの疲労が溜まっている状態や無理に速い球を投げようとしたり良くない投球フォームを続けることで

さらに肘にかかる負担が大きくなり重症化することになります。

 

成長期の小中学生の野球選手は大人のように骨や筋肉が成長しきっていないため

負荷がかかりすぎると骨や軟骨が傷ついてしまい骨が欠けたり変形することがあります。

そのままの状態にして骨形成に影響が出ると野球のプレーだけでなく生活にも支障が出てしまうため

手術が必要になることもありますので注意が必要です。

 

 

野球肘の症状

野球肘は投球動作、特に成長期の投手に多く起こる症状です。

使いすぎや過剰な負荷がかかることによって徐々に肘の痛みが起こります。

初期の段階では痛みは数時間後には治まりますが、

プレーを繰り返していくとそのうち痛みが増して治りにくくなります

そのような成長期の野球選手は全体の20%にも及ぶと言われています。

その多くはしばらくの間、安静にして投球動作を止めておくとほぼ治癒しますので

その間は投球動作以外の練習をするようにしてください。

 

また野球肘の症状は大人と子どもでは症状の出る部位が異なります

それは成長する過程で肘の最も弱い部分が変化していくからです。

繰り返し投球動作をとる中でこの弱い部分に負荷がかかり症状が起こることになります。

大人の症状は使いすぎによる筋肉や靭帯に発生することが多くなりますが

子どもの頃の症状が原因となることもありますので慢性化しないように早く治療を始めておきましょう。

 

野球肘の症状が出るのは大きく分けて肘の「内側」、「外側」、「後ろ側」の3つの部位です。

肘の内側」には投球の際に握る動作に関わる筋肉や靭帯が付きます。

投球動作時に肘の筋肉が離れるような力がかかるため筋肉や靭帯の損傷が多くなります。

小学校低学年くらいから発症し始め、野球肘の3つのパターンの中では一番多い症状ですが

他の場所に比べると比較的回復が早く、競技に復帰するのも早いことが多いです。

投球時や普段の痛み、患部の腫れ、動かしにくさや可動域の制限、小指側にしびれを感じたりします。

重い症状では筋肉の引っ張る力が強いために剥離骨折することもあります。

 

肘の外側」では投球動作の際に腕の骨がぶつかり合うため骨の表面を傷付けてしまい

骨が欠けてしまったり変形してしまうことが多い箇所です。

投球時や普段の痛み、動かしにくさ、可動域の制限などの症状が見られます。

一部が欠損したり離れた骨のかけらが遊離体となる離脱性骨軟骨炎が起こることもあり

発生頻度は多くないとはいえ治療が長期になりやすく慢性化しやすいため注意が必要です。

痛みが軽い段階からしっかり検査して治療を始めましょう。

 

肘の後ろ側」に起こるのは中学生の後半くらいから高校生の頃になります。

投球時や普段の痛み、動かしにくさ、可動域の制限などの症状が見られます。

肘の外側と同じで頻度としては多くないとはいえ疲労骨折なども絡むことがあり

治療が長期になることで慢性化しやすいため早期からの治療が必要です。

 

 

野球肘は肘のどの場所で症状が起こったとしても

体が硬い人や投球フォームが良くない人は再発しやすいため

治療を行いながらストレッチや投球フォームの見直しも並行して再発を防ぎましょう。